あの時間を忘れる方法が あるなら

離れようとしたらそのまま柊さんの体に押し付けるように更に引き寄せられ、その両腕に包まれてしまった

「柊さんッ‥離してください!」

『俺から逃げるなんて許さない‥‥』

私の肩に綺麗な顔を埋めてくると、柊さんの香りと熱が一気にそこから全身に伝わりどうしていいか分からなくなる

『最初は‥‥お金を出して莉奈の身代わりになってくれるならそれでいいと思っていた』

‥‥えっ?

『君がもっと嫌な人なら自分の利害だけを重視していられたのに‥‥真面目に取り組む姿や、自分の方が不安なのに、いつも俺と莉奈の事を第一に考えてくれる優しさに、俺が巻き込まなければきっと君の世界はずっと綺麗だったのにと思うようになった』

私の世界が‥‥綺麗‥‥?

汗をかいてアルバイトに明け暮れ、華やかな装いも何もなかった私が?


「ッ‥かいかぶり過ぎです!‥私はただ‥他の人の方が柊さんの助けになれる‥そう思ったんです!‥もっと自信に溢れてて強くて教養がある方の方が‥って」

真似事は本物には絶対勝てない‥だから‥‥


『君以外には頼まない』

「でもッ‥‥私は莉奈さんになりきれないッ‥!助けないといけない立場なのに、足手纏いになって守られるだけでした!安心してください‥‥恋人役になれなくても何処にも逃げませんから大丈夫ッ‥んっ!!』

首筋に噛み付くようにして柊さんの熱を感じそこに鈍い痛みを感じると、背中に回っていた手が私の首の後ろを捉えた

『‥恋人役じゃない‥。今、君は俺の恋人だ。
不安と言うなら、それを解決すればいい‥』

えっ!?