あの時間を忘れる方法が あるなら

「柊さん」

『ん?』

「‥私本当はすごくお転婆なんです。なので、その辺は大目に見てくださいね。」

『‥‥フッ‥ハハッ‥‥早く見たいくらいだ』

もう自分を偽らなくてもいい‥‥
でもあの時間があったから今の私がある

忘れたかった日々がある人生だからこそ、あの時間も含めてこれから先を紡いでいける気がする


「社長、おはようございます。」

『おはよう佐々木秘書。』

半年前、薄汚れたスニーカーを履き震えながら訪れたこの場所は今では私の日常に欠かせない場所になった

社長からジャケットを受け取りタブレットで本日のスケジュールを報告しながら私が淹れた少し甘めの珈琲を口にしフッと笑われた

莉奈さんが辞めた事は思ったほど騒ぎにもならず、森谷さんも梶さんも居なくなってくれて嬉しいなんて口にしたほどだ

どのような判決が下されるかは誰にもまだ分からないが父親に関しては誘拐だけでなく、詐欺や違法な薬物投与の罪もあるため莉奈さんより重い刑があるかもしれない‥‥

でも‥人を傷つけたり騙したりすればそれ以上のものが自分に返ってくる事をこれで学んで欲しい‥‥


『佐々木秘書、他所ごとを考える暇なんてないはずだが?』

「申し訳ございません。‥実は社長の事を考えておりました。」

タブレットを受け取ろうと手を伸ばすと、そのまま腕を引き寄せられ耳元に柊さんの声が響く



『‥それは許してやらないといけないな‥』



END