あの時間を忘れる方法が あるなら

『結愛の大切な人なんだろ?』

「‥うん」

真っ直ぐ辰哉君を見つめて答えると、柊さんが私の手をまた強く握ってくれた

『残念だな‥俺もお前のこと気に入ってたから、嫁にでも来ないかって思ってたんだけど、勝ち目はなさそうだからな』

えっ!?

悪戯にウィンクをして見せる辰哉君に柊さんが私の手を握る手に力が込められた

辰哉君のお嫁さんなんて想像もしたことなかったからそんな事を言われたら流石に恥ずかしくて照れてしまう

『水原 辰哉だ。言っとくが、お前の為に動くんじゃない。結愛のお願いだから聞くんだからそこんとこ勘違いするなよ?』

『ええ‥勿論です。心配いりませんよ。結愛は俺が幸せにしますから』

ええっ!!?

柊さんと辰哉君の間に見えない火花がバチバチとぶつかり合う中、八雲さんがパチンと大きく手を叩いた

『では、作戦会議と参りましょうか』

疲れがマックスの八雲さんが笑っているようで笑っていない笑顔を見せ2人を交互に見つめ、それを見た私は八雲さんが1番強いとさえ思えてしまった

一旦作戦を練り直し月曜日からまたいつも通り本社の業務に追われていると、薄いピンクのツイードのセットアップに身を包んだ莉奈さんが
秘書室にやって来た

『来週末柊さんのお家に行くのよ?ご両親と妹さんと一緒に食事をするの。』

手入れされた少し長めのネイルがお気に入りなのか何度も見てはうっとりしながら私を見て鼻でフンと笑って見せた