あの時間を忘れる方法が あるなら

前回同様八雲さんが迎えに来て下さり、車内で顔から火が出そうなほど褒めて頂いていると、会場である国内でも有名なホテルに到着し、2人でパーティー会場へと向かった

『佐々木さん、ちょっとだけ意地悪してみたいから協力して?』

えっ!?

私の手を取ると自分の腕に絡ませウィンクをすら八雲さんが既に多くの人が集まる会場へ足を踏み入れると、ざわつきと共に一斉に視線がこちらへ向けられて戸惑い足がすくみそうになる

「八雲さ‥」

『大丈夫‥‥』

ゆっくりと足を進める八雲さんに心臓がドクドクと音を立て不安しかない私だったが、通路の先にいた柊さんと莉奈さんの姿に安堵のため息をこぼす

『社長、佐々木さんをお連れしました』

周りの視線を感じながらも、誰よりも強い眼差しで私を見つめる柊さんの視線に緊張した

フォーマルなオーダーメイドのタキシードは手配した時から絶対似合うと思ってはいたが、これほどまでに素敵に着こなされると想像以上で見惚れない方が難しい

「社長‥遅くなり申し訳ありません」

『いや‥構わない。到着したなら側でサポートをしてくれ。挨拶に行く』

「かしこまりました」

『ッ!柊さん!私は!?』

光沢のあるネイビーのベルベットのドレスに身を包む美しい莉奈さんが私を睨むと、柊さんの腕に甘えるように手を絡めるものの、すぐにその手をそっと振り払い私に手を差し出した

『莉奈、これはパーティーでもあり、今日は大きなビジネスの取引も兼ねている。少しのミスが大損害になりかねない。佐々木秘書、行こうか』

シルク素材のロンググローブを身につけた私の手を取ると、自分の腕に絡ませ柊さんは莉奈さんに背を向けてその場を離れた