あの時間を忘れる方法が あるなら

『君がここを去ってからも、莉奈が目を覚ましたからただ元通りになるだけ‥‥そう思ってたのに、家に帰ると君がいない事がツラかった。‥何度も君がここに座っていたな‥と1人でずっと思い出しては色々考えた』

瞳を覆っていた手を私に伸ばすと、私の優しく頭を撫でた後、頬に触れてきて顔が熱くなる

『契約上だけの関係‥そんな事は承知の上だった。俺には命の恩人である莉奈の側で彼女を守り幸せにするべきだと。‥その為なら誰かの犠牲を払ってでも何とかしたかった。それなのに、俺は‥‥いつの間にか莉奈ではなく君のことを愛するようになったんだ‥‥少しもこの肝に気が付かなかったか?』

「ッ‥‥」

フッと綺麗な顔を緩ませて笑うと、体を起こして私の両手を柊さんが包み込んだ

優しくしてくれるのも、恋人のように接してくれるのも莉奈さんに私を重ねているだけで、そこには何の感情もないと思っていた

気付かなかったんじゃなく、勘違いしてはいけないと自分に言い聞かせていたのだから、本当はキスをされた時も嬉しさと悲しさが両方入り混じっていた

「ッ‥莉奈さんを愛していると思って‥」

『そうだな‥そう思うようにさせたのは俺だ‥‥。君を愛する事はないと言ったのだからな‥‥。君がツラくてここを去ったのも当然のことだと思う。諦めきれなくてこんな形で連れ戻して恨まれても仕方ないと思っていた‥‥それでも俺は君と生きる未来を諦めきれなかったんだよ‥』

夢のようなシンデレラストーリーは幕を閉じたと思っていたのに、忘れられない人からの強そうで儚い思いに我慢していた感情が溢れてしまう