あの時間を忘れる方法が あるなら

広々とした社長室がお母様の冷静な一言でシンと静まり返る

耳が聞こえなくてもこれだけ三人が一斉に話せば通訳しなくても伝わるのだろう‥‥

『佐々木さん』

「はい‥奥様」

私が支えるのは社長だ。しかし、この川崎グループを束ねるのは柊さんの父である会長だからこそ、お母様を奥様と呼ぶにふさわしいか分からなかったがそう呼ばせていただいた

どんか処遇でも受けよう‥‥
そう思い両手を前で合わせてから軽く頭を下げた

『1時間後に食事に付き合いなさい。柊、あなたもよ。』

えっ?

『お母様?私も行ってもいいのですよね?』

莉奈さんの言葉を通訳されると、お母様はまた冷たい視線を莉奈さんに向けた

『ッ‥私の事を認めてくださったのにあんまりです‥‥。今の柊さんがここに居るのは私が助けたからですよ?』

莉奈さんの言葉に目を見開きその後に柊さんの方をつい見てしまうと、柊さんは私の方をジッと見つめていたのか目が合ってしまった

『‥‥あなた‥少し見ない間に変わったわね。
それとも欲が出て来たのかしら?』

『ッ!!』

『もういいわ。こんなくだらない話をする為に来たわけではないの。仕事の話をするから早く出て行きなさい。』

お母様が放つ言葉に胸がざわつく‥‥

莉奈さんがまさか柊さんを助けた事を口にするなんて‥‥

「失礼致します。」

言われた通りに動かねばまたお叱りを受けてしまう。そう思った私は、お辞儀をして静かに社長室を出ると、すぐに社長室を出て来た莉奈さんが機嫌の悪さを剥き出しにして睨んだ