あの時間を忘れる方法が あるなら

私って腰が低かったんだ‥と思わず苦笑いが出てしまいながらも、今の莉奈さんの態度に秘書だけでなく困っている人も少なくはない

素直というか‥ハッキリとした性格が故に、容姿だけ真似していた私にはそこだけは真似できなかったから申し訳ない気持ちもある

『結愛ちゃん、虐められてない?』

「大丈夫ですよ。ありがとうございます」

2人とも4、5歳年上ということもあるけれど、お姉さんのように優しくて頼もしい存在だ

『そっか、なら良かった。明日の歓迎会は沢山飲ませちゃうから覚悟してね』

「お手柔らかに頼みます。楽しみにしてます」

明日の金曜日の終業後、秘書課の皆さんが歓迎会を開いて下さり、社長と八雲さんも参加して下さると聞いている

こんなベテランの方々にお祝いして貰えるなんて幸せだと思わないと罰が当たりそうだ‥‥

そして金曜日

勝手に居酒屋をイメージしていた私には、連れてこられたお店が高層階のビルの最上階に位置するレストランだとは思わず入り口で呆気にとられてしまった

『社長が選んだお店ですよ』

ニッコリと微笑む八雲さんに対して笑顔が引き攣ってしまいそうだったが、案内された奥の方へ向かうと既に私達以外は集まっていた

『佐々木さんは社長の隣へどうぞ』

「い‥いえ‥私は隅の方で‥」

『結愛ちゃん、主役なんだから真ん中に行かないと駄目よ』

森谷さん!?

森谷さんに長テーブルの真ん中に座る柊さんの隣に強引に座らされてしまうと嫌ですとは言えず隣から視線を送る柊さんに頭を下げると、柊さんの反対側の隣に座っているのは莉奈さんだと気付いた