あの時間を忘れる方法が あるなら

『悪い事をしていないなら謝るな‥』

「ッ‥‥しかし、直接渡さなかったのは私です。任せてくださった八雲さんに申し訳ないです」

柊さんの両手が私の肩に触れると俯いていた顔をゆっくり上げて恐るおそる柊さんを見上げる

すると、低い声とは裏腹に表情はとても穏やかで綺麗な顔でフッと笑った気がした

『こら‥‥申し訳ないと思うのは八雲だけなのか?』

「えっ?い‥いえ!そんな‥社長にも申し訳ない気持ちでいっぱいです」

心音がドクドクと速さを増し、ブラウスの上から触れている柊さんの手の温度に嫌でも熱を帯びてしまう

『フッ‥‥意地悪をした‥‥八雲から聞いてるから事情は知っていた。今回だけは許すが、次からは気をつけて欲しい‥君は俺の秘書だと言う事を忘れないで。』

「はい‥ッ‥かしこまりました‥」

ワザとではないかと思うほど美しい顔をグッと私に近づけてそう言うと、懐かしいシダーウッドの香りに包まれ顔に熱がこもり前を向けない私は体と視線を逸らしながらも何とか耐えた

『すぐに目を通してサインするからそこに居て。あ‥その前に珈琲だけ頂こうかな』

緊張から返事をしないといけないのに、コクコクと頷く事しか出来ず、ようやく離れた柊さんに聞こえないように心の中で盛大なため息を吐いたのだった