あの時間を忘れる方法が あるなら

『莉奈は八雲の指示を受けてくれ。佐々木さんは‥珈琲を頼めるか?』

「はい、かしこまりました」

『柊さん!珈琲なら私が』

『莉奈‥いや‥長浜さん、ここはプライベートじゃないからその呼び方を控えて欲しい。』

『ッ!』

両手に力を入れて握りしめる莉奈さんを他所に柊さんは振り返らず社長室へ行ってしまったが声かけ出来る立場でもなく給湯室へと向かい珈琲豆を電動ミルにかけた

濃いめで淹れてからミルクを2杯とお砂糖を少し

疲れが溜まったりする時に家でも甘めにして飲んでいた事を知っている為、ブラックではなく
いつもそう淹れていた

また飲んでもらえる日が来るとは思わなかったな‥‥

『少しいいかしら』

えっ?

お湯をゆっくり落としてから蒸らしていると、背後から近づくヒールの音に振り返ると真顔で笑み一つこぼさない莉奈さんが近づいて来た

『あなた‥どういうつもり?去ると言ったのにまた戻ってくるなんて。』

「‥申し訳ありませんがお答えできません。莉奈さんも私の事は初めて会う社員として接して頂けないでしょうか?」

契約の事をもうぶり返すことは二度とない‥
もしそれが公にでもなれば契約違反となり柊さんにも迷惑がかかってしまう

腕組みをして立つ莉奈さんにも怯まず軽く頭を下げてから珈琲をカップに注ぐとドンっと押された拍子に熱湯が手の甲にかかってしまった

「あッ!!」

慌てて水道の蛇口を捻り左手を冷やすものの、既に皮膚がヒリヒリと痛み始めてしまった