あの時間を忘れる方法が あるなら

自分で用意したスーツではなく、以前も着ていたスーツに袖を通してお化粧はナチュラルだけど品よく見えるように施すと、肩上までの髪を丁寧にブローした

初日だからと気を抜いて行けるような場所ではなく、IDを通したらもうそこから始まっている気がする

周りからの視線を気にしながらエレベーターを待っていると、背後がざわつき私も視線をそちらに向けると、思わず持っていた鞄を落としそうになる程緊張感が増した

莉奈さんだ‥‥‥

私と似ている容姿だが、スタイルも良く、メリハリのある体のラインや手足の細さ、艶のある髪にしっかりとメイクされた美しい顔が全部バランスが取れている

隣を歩く柊さんともこれ以上ないくらいお似合いで、誰もが2人を見ずにはいられないほどだった

『おはよう』

『『おはようございます、社長』』 

すれ違う社員の方々が頭を下げて挨拶をされら中、こちらに真っ直ぐ歩いて来たので私もきちんと向き直り頭を下げた

「社長、おはようございます」

『佐々木さんおはよう。今日からよろしく頼むよ』

えっ?

社長が直々に名前を呼んだ社員として今度は私に周りからの視線が集まると、エレベーターが到着したと同時に背中を支えられて社長と莉奈さんと一緒のエレベーターに乗らされてしまった

周りの社員は遠慮したのか3人のみのエレベーターの中が一気に重苦しく感じられながらも、社長室のある階のボタンを押すしかなかった

『‥‥柊さん?彼女は誰かしら?』

ドクン