あの時間を忘れる方法が あるなら

研修期間を1週間過ごす為に記載されていた時間よりも少し早く出社すると、まだIDを持たない私はエントランスの警備に名前を書いてから人事部へ向かった

コンコン

「失礼します‥」

まだ朝早いからか静まり返ったフロアに入るわけにもいかずその場で立ち尽くしていると、背後から近づいて来た人に気が付かず、両肩を叩かれた時には思わず大きな声を出してしまった

『ハハッ!!ビックリした?ごめんね、驚かせちゃって』

「ッ!!す、すみません‥私の方こそ驚いてしまって‥!!?」

振り返って見上げると、背丈がかなり大きくてガッチリとしてるのに美形でハーフな容姿に圧倒されて口が開いてしまう

3ヶ月ここにいたけれど、他の部署と関わることって殆どなく、基本的には八雲さんの補佐として社長室に隣接された部屋にいたから知らない事が多いはず

『君、可愛いね。こんなに朝早く俺を訪ねて来るなんて‥もしかして俺のこと襲いに』

『おい、いい加減にしろ‥』

えっ?

ダークブラックのスーツにパリッとした白いシャツ、センスの良いダークグリーンのネクタイを着こなす柊さんに驚き壁側に避けると、視線を一瞬感じたものの、すぐに目の前の男性の方を向いてしまった

『おやおや、社長自らこんな部署に足を運ぶなんて一体どういう風の吹き回し?』

『泰雅(たいが)‥白々しい芝居を朝からお前とする気はない。それより、今日から入社する佐々木さんだ。1週間、人事で会社の知識を身につけれるように研修を頼むな。』

泰雅‥?
話し方的に親しみも感じられるが、2人とも龍と虎かのようにお互いを睨み合っているようにも見れるが、背が高いと思っていた柊さんよりも大きなその男性は下手したら190センチはあるのかもしれない