あの時間を忘れる方法が あるなら

その日の夕方目が覚めてまずは驚いた。

午前中におばあちゃんの家を出たからお昼くらいだと思っていたのに既に夕方だったこと。

そして、車の中ではなく知らない部屋のベッドに寝かされていたことだ。

気を張っていないといけない状況なのに、今の今まで気が付かないなんてどうかしてる‥‥

「はぁ‥‥」

起き上がり寝室らしき部屋を出ると、広めのLDKの中心に置かれたテーブルの上にスマホと鍵、そしてメモがあった

「‥‥‥ッ」

誰が書いたかなんて言わなくても分かる‥‥


【世話になったのは俺の方で君じゃない。ここにずっと居てもいいから安心しろ】

まるで柊さんの元を去った日に書いたお世話になりましたというメッセージに対しての返事にも受け取れる内容に胸が苦しくなり、メモを胸に抱えて抱き締めると、その場に座り込んで声を押し殺して泣いた

今だけ‥‥

明日からは社員になれるように頑張らないといけないのだから、泣いてる暇なんてきっとないし、柊さんにこんな風に関わることなんてないから今だけは‥‥

こんな素敵な部屋も用意してくれ、クローゼットには真新しいスーツや靴、鞄などもあり、そこに初めて買ってもらった黒のドレスとブルーの着物も置いてありまた目頭が熱くなるものの涙をグッと堪えた

大丈夫‥‥今度は本当の私で居ていい‥‥

誰の目も気にせず、本当の私として前を向いて生きていける‥‥それだけでも前とは違うのだから