あの時間を忘れる方法が あるなら

柊 side

もう会う事はないと思っていた彼女が隣にいる

少々強引だとは思っていたが、結愛が仕事を探していると連絡があり、あの場で逃げれないように契約させた

隣で寝たフリをしはじめた彼女にフッと笑みが溢れるものの、暫くすると深い寝息が聞こえたので顔にかかっていた前髪をそっと指で撫でると、傷のようなものが見えた気がしたが、起きてしまいそうだった為咄嗟に手を引いた

中学から苦労してきた彼女には、働きながら取りたい資格があれば学ばせたいし、安定して自立させる事で自信もつけて欲しい‥‥

本当なら今すぐにでも甘やかして腕の中に閉じ込めたいところだが、莉奈の事も解決していない以上、周りから守る為には他人のフリをするつもりだ

俺から離れたいだろうが‥‥側にいたいという願いだけでも受け止めてくれないか?
今はそれ以上は望まないから‥‥

マンションに到着すると、気持ちよさそうに眠ったままの結愛を起こさず抱き抱えると、あまりの軽さに心配になったが、無防備な寝顔な彼女にこちらまで気が抜けてしまう

『八雲、起きた時に何か食べられるように冷蔵庫に食料を入れておいてくれ。』

『かしこまりました』

ベッドにそっと寝かせても起きる気配がない彼女の髪を撫でると、会社用のスマホと家の鍵をテーブルに置きメモを残した

まるで‥結愛が去った日と同じような光景だったが、彼女に視線をうつし静かに部屋を後にした