碧い季節に、陽だまりのような君を。


「実力テストどうやった?」

7月末から8月31日まで、長かった夏休みも終わり。

実力テストが終わった日の放課後、私――織宮(おりみや)結羽(ゆわ)は彼氏の笠原日和(かさはらひより)とカフェに来ている。

「数学は結構自信ある。英語もまあ、夏休み中織宮さんが教えてくれたから結構できたかも」

「よかった」

なんでもない風を装って笑ったけど、胸の中には小さな不満がひっかかる。

夏休みの間何回か一緒に勉強会したり、夏祭りに行ったりしたのに、ずっと「織宮さん」呼びなのがどうも気に入らない。

かといって自分から笠原くんに『名前で呼んで』なんて絶対に言えない。

自分は笠原くんを苗字呼びしているから、特大ブーメランになってしまう。

――いや、私が笠原くんを苗字呼びしているのは致し方ないし。

D組には、笠原くんとは別に『ひより』という名前の男子――葉口(はぐち)緋由(ひより)くんがいる。

普段から笠原くんとよく一緒にいる男子だから、下の名前で呼ぶと「どっち?」ってなりそうだ。

だから私が、笠原くんを苗字呼びするのは致し方ないことだ。

頭の中でぐるぐると回り始めた思考にリンクするように、私の手はキャラメルラテをストローでぐるぐると混ぜる。

「てか高校の最寄りの近くにこんなおしゃれなカフェあったんやな」

氷が溶けて薄くなったキャラメルラテをストローですすっていると、笠原くんがアイスティー片手に店内をぐるりと見渡しながらそう言った。

「インスタで見つけて、一回行ってみたかったんよ」

「そうなんや。僕インスタやってないからあんまわからんな」

そう言って笠原くんはもう一度アイスティーに刺さったストローに口をつけた。

私もモヤモヤが晴れないまま、キャラメルラテをすする。

ずっと来たかったはずのカフェなのに、私の気分は薄まったキャラメルラテのようにぼんやり味気なくなっていた。