【更新停止】ハナコトバマジック!

「ふんふーん♪」
 下校途中の帰り道。わたし――白羽かすみ、昨日からゴキゲンだ。
 王子先輩がね、「園芸部作ろう」って言ってくれたの!
 部員が足りないからまだできないけど……いつか絶対作れたらいいな!
 ふふっと、想像してニマニマしてたら。
 
「魔法少女さん」
 後ろから、ヒヤッと冷たい声がした。
 この前の……!
  
 同い年くらいの男の子が、黒いマントをなびかせ立っていた。
 夕暮れの光に照らされて、青い瞳が怪しく光る。
 おとなりには、怪人さん。
 悪いヒーラーがいるって話と、ピッタリつながった気がした。
 
「もしかして……あなたもお花の魔法を使ってるんですか?」
「——え?」
 おずおず聞いたら、男の子は面食らったような顔。
  
「あっ、あなたもヒーラーなのかなって。わたしと同じで——」
「僕をヒーラーと一緒にしないで!」
 突然、男の子が叫んだ。
 
「ごめんなさっ、」
「……いい。謝らないで」
 そう言って、瑠璃色の目をふせた。
 怒らせちゃった……。
 ヒーラーのこと、嫌い……なのかな。
  
 その子は、口をキュッと引き結んだ。
 ハラハラしながら、男の子を見る。
 少しの沈黙のあと——その子は、何かを覚悟したみたいに顔を上げた。
「花の力は使うけど、ヒーラーとは一緒にしないで。僕は悪の組織・ウィザーズの幹部」
 そう言って、バサッとマントをひるがえした。
「君の敵だよ」
  
 ——敵。
 
 その一言に、ひゅっと息が詰まる。
 
「僕の目的は、クリスタルを集めることだ」
 敵の幹部さんはそう言うと、怒ったようにツカツカ近づいてくる。
「君のクリスタル、渡してもらうよ」
 わたしは、ぎゅっとクリスタルをにぎりこんだ。
 
 ——戦わなきゃ。
  
「カスミソウ!」
 白い光につつまれて。
 あっという間に、フラワーヒーラーに大変身!
「あなたに幸福が訪れますように!」
 そう名乗って決めポーズ!
 やっぱりこの格好、お姫様みたいですっごくかわいい!
 まだちょっと怖いけど……がんばろう!
  
 ——って、決意したのはいいんだけど。
 怪人さん……動かない。
 敵の幹部さんは、それをじっと見守ってる。
 この前の、直立不動な桜怪人さんを思い出した。
 
 もしかしなくても、これってすごいチャンスだよね!?
 今のうちに浄化しちゃうっ!?
  
「清らかな心にな〜れっ!」
 カスミソウの魔法を放った!
 これで安心……と、思ったら。
  
 すぐさまバリアではじかれた!!
 わわっ、カスミソウのふわふわ魔法が消えちゃったっ。
 何度やっても浄化できない。
 もしかして、この怪人さん……バリアで魔法を防げるの!?
  
「この怪人は、カランコエ。君の魔法は効かないよ」
 幹部さんが、ご丁寧に解説してくれた。
 
 確かに、言われてみればカランコエに似てる。小さなお花が、たくさん集まってるところとか。
 カランコエの花言葉は確か……「あなたを守る」だったっけ。
 そっか、だからバリアができるんだ!
 ……わかったところで、どうすれば?
  
「かすみ〜。後ろにはバリアなさそうだよ〜」
 ツユくんが、怪人さんの後ろに飛んで教えてくれた。
「ありがとうっ!」
 よーし、後ろだねっ。そこから浄化すればいいんだ!
 どうやって、後ろに回ろう……。
 
 わたしが使える力は、カスミソウと桜の二つ。
 んー……なにかいい魔法ないかなぁ……。
 頭フル回転で考えて……思いついた。
 
 できるかな。
 うん……だいじょうぶ。この前だって、ちゃんと魔法使えたもん。
 よしっ、やってみよう!
 
「桜っ!」
 ピンク色のクリスタルを、ステッキにセット。
 おねがいします、わたしを二人に増やしてくださいっ!
 すると、またたく間に、桜の花びらにつつまれて——。
 わたしが二人に増えちゃった!
  
「ソメイヨシノ」っていう桜はね。実は、クローン——同じ木を増やしてるんだって!
 だから、魔法でわたしも増やせるかなーって思ったの!
 お花の図鑑で覚えた知識、ちゃんと役に立ったね!
 
 わたしはすぐさま、怪人さんの後ろに回り込む。
 同時に魔法を使ったら、片方の魔法は防げないはず!
「「これでダメなら三人、それでもダメなら四人に増えればいいんだよっ!」」
 クローンのわたしと声がハモる。
  
「そ、そんな力技で……?」
 幹部さんが、ボーゼンと声をあげた。
 いいんだよっ、浄化できちゃえばなんでもっ!
  
「清らかな心にな〜れっ!」
 マジカル・ジプソフィラ!!
 ステッキから放たれた光が、怪人さんをつつみこむ。
 後ろから、優しく、優しく——。
  
 光が消えた時には、怪人さんもいなくなっていた。
 これで浄化成功だねっ!
  
 喜んだのもつかの間、空から何か降ってくる。
 三つ目のクリスタル!
 カランコエの力だ……!
 手に取ろうとした、その瞬間。
 
「——ごめん」
 
 そうつぶやいた幹部さんが、わたしに向かって走ってくる!
 手を伸ばそうとしたのは、クリスタル……!
 
「ダメっ」
 わたしはとっさに、幹部さんをよけた。
 伸ばされた手は、宙をスカッと空振り。
 よろけて振り返った彼は、なんだか悲しそうな表情で——。
 そのままワープで帰っちゃった。