【更新停止】ハナコトバマジック!

 少し暗くなってきた、夕方。
 ここは悪の組織・ウィザーズのアジト。
 僕——瑠璃川湊は、ここで本を読んでいた。
 辞書みたいに分厚くて、読むのにも一苦労。
 
 それだけじゃない……文字の羅列が、するりと目をすべっていく。
 ……ダメだ。内容が頭に入ってこない。
 やっぱり、少し気になってしまう。
 この前から、ずっと心に引っかかってるんだ。
 
 ——幼なじみの、すみちゃんのことが。
 
 びっくりした……。
 まさか、すみちゃん(白羽かすみさん)が魔法少女になるなんて。
 あの時、すみちゃんと戦ったのは僕だ。
 正体、バレちゃったかな。
 動揺しすぎて、思わず逃げちゃったけど。
 これから、すみちゃんと戦わないといけないのかな。
 嫌だな……。
  
 そう考えていたら……無意識に、クリスタルを眺めていた。
 黒いチューリップのクリスタル——呪いの力。
 僕が使える、花の呪い。
 
 組織をやめることは、絶対にできない。
 元はと言えば、ボスに協力しようとしたのが悪いけど。
 あの時は、こんなことになるなんて思ってなかった。
 
 誰かを傷つけることになるのなら。大切な人を悲しませるのなら。
 協力なんて、しなきゃよかった。
 
 ——クリスタルを集めるだけ。そうしたら、君の願いを叶えてあげる。
 そう言われて、うなずいてしまった。
 今思えば、すごく怪しいってわかるのに。
 なんで、あの時は——。
 
 後悔と自責が、心の中に渦巻いていく。
 ドロドロとした、闇のように。もがいても、もがいても、飲み込まれてしまう。
 ゆっくりと、ゆっくりと、黒い沼に沈んでいく……。
 嫌……嫌だよ。助けて……。
  
 ——すみちゃん。
 
 気づいたら、思い浮かべていた。
 にこっと微笑む、幼なじみ。
 
 ハッとした。
 その考えを振り払うように、思い切り首を振る。
 ダメだ。忘れないと。
 今の僕は、敵なんだから。
  
 とにかく、クリスタルを集めなきゃ。
 全部集めて、願いを叶えてもらわないと。
 そうしたら、きっとみんな幸せになる。
  
 だから——この気持ちは、封印しよう。
 もう二度と、思い出さないように。
  
 つらい気持ちに鍵をかけ、心の奥に押し込んだ。
 溢れないように、蓋をして。
 
 大丈夫。……やれる。
 絶対に、冷たい敵になってみせる。
 
 そう誓って、キッと顔を上げた。
 僕は——もう、戻れないから。
 呪われたクリスタルを、ぎゅっと握りこんだ。