【更新停止】ハナコトバマジック!

 部活動を見学してきた、放課後。
 秘密の場所——花壇で、わたしはほっと一息ついた。
  
 お花、落ち着くなぁ。思わず口角が上がっちゃう。
 お日様ぽかぽかだし、お花たちがかわいいし、甘くていい香りがするし。
 ここに来れば、一日の疲れも吹っ飛んじゃう!

 毎日ここで、妖精さんと合流することになってるんだ。
 ヒマリちゃんも、ツユくんも、王子様をさがして飛び回ってる。
 フラワーヒーラーのこと、なにか知ってるかもしれないって。
 そろそろ二人とも帰ってくるはず!
 もうちょっとだけ、お花にいやされていよう。

 お花を見ながら考え事。
 部活、どうしようかなぁ。
 たくさん見学してきたけど、どれもピンと来なかった。
 お花に関連するものがあればなーって思ってたんだけど。
  
 確か……ゆずちゃんはバスケ部で、みなとくんは帰宅部だっけ。
 うーん……帰宅部かぁ。いっそどこにも入らないで、ここでずっとニマニマしててもいいかも。
 お花、大好きだし——。
  
「あれっ、見学希望?」
 ぼーっとしてたら、後ろからだれかに話しかけられた。
 振り返ると、そこに男子生徒が立ってる。
 絵本に出てくる王子様みたい。すっごくきれいな人。
 背が高い……先輩、かな。
 
「あのっ、見学って……?」
「園芸部の見学。まぁ、まだ部活できてないんだけどね」
 先輩は、そう言ってふにゃっと笑った。
 え、園芸部……!?
「あのっ、それって、」
  
「かすみー!」
 空の上から声がした。
「今日も見つからなかったのです!」
 わわっ、ヒマリちゃんだ!
 わたしに向かって一直線。
 来ちゃダメっ。先輩がいるから……!
  
 それに気づいて、ヒマリちゃんは急ブレーキ。
 でも間に合わなかった!
 先輩、ヒマリちゃんのことすごくじーっと見てるよっ!
 あわあわしてたら、先輩の口からショーゲキの一言。
 
「あれ。もしかして、ヒマリ?」
 うぇっ、お知り合い?
 そう思って、ヒマリちゃんの方を見ると……「だれ?」と言いたげに首をかしげてる。
 じゃあ、知らない人……?
 
「あの〜、どちら様ですか〜?」
 物陰にかくれていたツユくんが、ひょっこり顔を出した。
「あっ、ツユも久しぶりだね。俺だよ、おーれ♪」
「だれ……?」
「俺だよー。わからない?」
「わからないです〜」
 
 するとヒマリちゃん、むむ〜っと考え込んで……。
 ハッ! と顔を上げ、ツユくんの後ろにかくれちゃった。
  
「まさか、オレオレ詐欺なのです!?」
 うぇっ、詐欺師!?
 警戒するヒマリちゃん。
 怖くなって、わたしも一歩後ずさり。
 
「ヒマリ〜、オレオレ詐欺は電話でやる詐欺だよ〜」
 ツユくんがゆるーく突っ込んだ。
 うぇっ、そうなんだ!
 じゃあ、先輩は詐欺師じゃないってことだね!
 だとしたら……この先輩は、一体ナニモノ……?
  
「んー……やっぱりこの大きさだと気づかれないかぁ」
 先輩がそうつぶやく。
 同時に、ぼんっと真っ白なケムリがあがった。
 うぇっ、なに!?
 ケムリがだんだん晴れていく。
 
 ……先輩が、消えた。
 代わりにいたのは……妖精さん!?
「久しぶり。王子でーす♪」

 *

 王子リオン先輩。妖精の王子様なんだって。
「苗字そのままでわかりやすいでしょ♪」って、にっこり笑ってた。
 妖精世界から逃げてきて、この中学校に通ってるみたいなんだ。
 ——って、まずはそれより!
 
「詐欺師扱いしてごめんなさいっ!」
 わたしたち、全力で頭を下げた。
 王子様に、なんたるご無礼をっ……!
 
「いいよー、俺も怪しかっただろうし。ごめんねっ」
 ——あれっ。
 王子様……ほんわかしてて親しみやすい?
 
「そんなことより……俺に聞きたいこと、たくさんありそうな顔してるね」
 ええと……。
 わたしと妖精さん、パチッと目配せ。
「好きなこと聞いていいよ」って言ってくれるように、二人ともうなずいた。
  
「あのっ……どうして、『ヒーラーは危険』って言われているんですか……?」
 たくさん聞きたいことはあるけど。一番、引っかかっていたことを聞いてみた。
 
 すると王子様、スっと笑顔が消えて真剣な顔に。
「それは……『呪い』が、妖精の世界をおそってきたからだよ」
 呪い……?
「花の力を呪いに使う、悪いフラワーヒーラーがいるんだ」
「悪いヒーラー!?」
 思わず声をあげちゃった。

 わたしと同じヒーラーが、妖精の世界をおそったの……?
  
「ヒマリ、ツユ。君たちにクリスタルをたくして、『逃げて』って言ったよね」
 二人とも、静かにうなずいた。
「それは……また、呪いを使う『悪いヒーラー』が現れたからだよ」
 思わずヒュッと息を飲んだ。
 悪い、ヒーラーさん。
  
「『フラワークリスタル』——お花の力の結晶。ヤツらはそれをねらってる」
 ——クリスタル。この前、魔法を使うときに使ったものだ。
 
 そういえば……あの怪人さんたちも、クリスタルを欲しがってた。
 一緒にいた男の子も……ヒマリちゃんが持っていたものを、「わたせー」っておどしてた。
 じゃあ、あの子たちが……悪いヒーラーさんってこと?
  
「確かに。クリスタル、魔法の力を使えますもんね……」
 わたしがそう言うと、王子様はなぜかドヤ顔。
「それだけじゃないんだよ。全部そろったら、すごい力を使えるようになる。——かも!」
 かも!?
 
「ごめんね、そこはよくわかんない。クリスタル、人間の世界に散らばってるから……」
 てへへと笑う王子様。
 
 わたしたち、ぽかーん。
 そんな大事なものが、なんで人間の世界に!?
 聞いてみたら、「さぁ」と王子様は肩をすくめた。
  
「ええと、わからないことも多いけど……とにかく、クリスタルを取られないようにすればいいってことですね!」
「そういうこと。あっ、そうだ。魔法の使い方も教えてあげる」
 王子様は、にっこりほほえんでくれた。
 そういえば……わたし、魔法の使い方なにも知らないよ!!
  
「まず、ひとつめ。ヒーラーは、体の傷をなおせちゃいます!」
 えっ、傷をっ!?
 ——って思ったけど、「ヒーラー=癒し手」だもんね。だから傷もなおせるんだ!
  
「変身して、傷の近くに手を近づける。そうすれば、すぐになおるよ♪」
 うぇっ、じゃあ、この前転んだときの傷もなおせる?
 実は、ヒザ、まだちょっと痛くて……。
  
 さっそくヒーラーに変身して、ヒザに手を近づけてみる。
 すると……うぇっ、すぐに痛みがひいていく!
「ふふっ。これでなおったね」
 そう言うと、王子様はピースサイン。
  
「ふたつめ。お花の力を借りる魔法」
 王子様が目線を向けたのは……わたしの魔法のステッキだ!
「出したい魔法を考えれば、クリスタルが答えてくれるみたい。そのステッキを通してね」
 わたしは、持っているステッキをまじまじと見つめた。

「だれかを傷つける魔法は使えないから、そこだけ注意してね」
 うぇっ。そんなこと、しようと思ってなかったよ。
 やっぱり、お花の魔法は優しいんだね!
 そういえば……この前ヤケクソでステッキ振り回しても、なにも攻撃できなかったもんね。
 このステッキ、すごい……!

「ちなみに。花言葉でも、特徴でも。クリスタルのお花に関連していることなら、なんでもできちゃうんだよ」
 そうなんだ!
 確かに……カスミソウの魔法で、怪人さんを「清らかな心」にして浄化したよね。
 それって、お花大好きなわたしにとって、すっごく有利ってことじゃない!?
 
「今持ってるクリスタルは、カスミソウと桜だね……」
 うんっ、さっそく魔法試してみよう!
 なにかいい魔法ないかな……。
 考えてたら、ヒマリちゃんが目をキラッと光らせた。
「じゃあ、さくらもちも出せるのです!?」
 うぇっ、桜の魔法で?
 できるかな……。
 
 ええと……まずは、クリスタルをステッキにセットして。
 さくらもち、さくらもち……。
 目を閉じて、イメージしてみる。
 ピンク色をして、桜のいい香りがして、甘くて……。
 
「すごいのですっ!」
 うぇっ?
 ヒマリちゃんの歓声に、目を開けてみると……。
 花壇に降りそそぐ、さくらもちの雨!!
 出しすぎたっ、止めないとっ!
 
「わーいなのですっ」
 あわあわしてたら、ヒマリちゃん、さくらもちの山にダイブ!
「地面に落ちたものは食べちゃダメだよ〜」
 そう言って、ツユくんもさくらもちをパクっ。
  
 わ、わたしもっ! いただきま〜す。
 空中でさくらもちをつかんで、口に運ぶ。
 
 ……うわぁっ、もちもち!
 口の中に、ふわ〜っと甘さといい香りが広がって。
 お、おいしすぎるっ……!
 これで魔法の使い方、ちょっとわかってきたかも!
 こんもり積み上がったさくらもち山を見ながら、わたしたちは休憩するのだった。
 
 でも……頭の片隅で、「悪いヒーラーがいる」ってこと、ぜんぜん離れなかったんだ。