【更新停止】ハナコトバマジック!

 きけん。キケン。危険——!
 さっきから、その言葉が頭でグルグル。
  
 わたし、白羽かすみ。引っ込み思案な、ふつうの中学一年生。
 ——だったんだけど。
 
 どうやらわたしっ、危険人物になってしまったみたいです——!
  
「キケンっ、どうしよう!?」
 考えすぎて、パニックになるわたし。
「だいじょうぶだよ〜、落ち着いて〜」
「かすみは危険じゃないのです!」
 なだめてくれる声がした。
 見ると、手のひらサイズの小さな人が。
 
 穏やかな、青髪のツユくん。元気いっぱいな、ツインテールのヒマリちゃん。
 二人ともお人形さんみたいに小さいの。パタパタ飛んでる姿がとってもかわいい。
  
 実はね——この二人は、妖精さん!
 出会ったばっかりなんだけど、すぐに仲良くなっちゃった。
  
 あっ、想像じゃないよ。本当だよ!
 フラワーヒーラーっていう、お花の魔法少女(多分)。
 よくわからないけど、わたしはそれになっちゃった。
 さっき、ブキミな怪人さんと戦ったんだけど——その時に、協力してくれた妖精さん。
 なんでも、妖精の世界から逃げてきたみたい。詳しくはわからないんだけどね。
  
 でも……ふふっ。魔法、使っちゃった。
 あの時は、すっごくワクワクしたなぁ。
 だってだって、カスミソウの魔法だよっ。
 ふわふわでっ、真っ白でっ、とってもとってもかわいくてっ。わたし思わず見とれちゃって!
  
 ……はっ。そうです、このようにわたしはお花好き!
 花言葉とかっ、特徴とかっ、たくさんたくさん覚えてるんだよ♪
  
 ただ、ね……。
 怪人さんは浄化できたけど。
 妖精さんたちの間でね、「フラワーヒーラーは危険」って言われてるみたいなの。

 ヒーラー=わたし。
 わたし=危険。
 ……って、ことになるよね。
  
 ——どうしようっ!?
 また、さっきのグルグル思考にもどっちゃった。
 もし、本当に危険だったら——。
 想像して、ゾワッと鳥肌。
  
 わたし……もしかしなくても地獄行き!?
 悪魔さんとか、エンマさんとか、怖ーい人たちに囲まれて。わたしの嫌がるようなこと、たくさんされちゃうんじゃないかな。
    
 サァァァッと、顔から血の気が引いていく。
 いやっ、きっとそれだけじゃない。
 地獄に行くまで、冷たい牢屋にとじこめられちゃうんだ。
 妖精さんから嫌われて、一生出ることはできなくて。ずっと泣いてすごすんだっ。
  
「——ロウヤなのですっ!?」
 突然、ヒマリちゃんがさけんだ。
 うぇっ、わたし想像したことしゃべっちゃってた!?
  
 どうしようどうしようっ、地獄も牢屋もどっちもいやだよ!
「かすみっ!」
 あわあわしてたら、ヒマリちゃんが飛んできた!
 
「短い間だったけど、かすみのことは一生忘れないのです!」
 ひ、ヒマリちゃん……!
 その優しさに、じわっと涙がこみあげる。

「こちらこそ、お友達になってくれてありがとうっ」
 わたしたち、両手でガッシリ握手した。
 ヒマリちゃんの、小さな手のあたたかさ。
 絶対絶対、忘れないよっ。
 今までありがとう、ヒマリちゃん——!
 
「ちょっと二人とも〜。お別れしないで〜?」
 はっ!
 ツユくんの声で、一気に現実にもどされた。
  
「危険っていうのはただのウワサ。本当かどうかはわからないよ〜」
 うぇっ、そうなの?
 わたし、目をぱちぱち。
  
 じゃあ……地獄に行かなくてだいじょうぶ?
 妖精さんとも、サヨナラしなくていいのかな?
 そう思ったら、一安心。
 ほ〜っと息をついちゃった。
 仲良くなって、すぐお別れは悲しいもんね。
  
 あれ? でも……なんかちょっと引っかかる。
「なんで、そんなウワサが?」
 すっごく危険なヒーラーがいた、とか?
 
 二人は黙って考え込んで……。
「王子様なら知ってるかもなのです!」
 そう言ってガバッと顔を上げた。
  
 ……えっ、まって。
 王子様? って、妖精さんの王子様!?
「オレらでさがしてみようか〜。この世界にいるはずだからね」
 王子様が、この世界に……?
 その言葉を聞いた瞬間、わたしの心臓ワクワクぴょんぴょん!
 
 もしかして、会えちゃうかもってこと……!?
 フツーだった現実が、絵本みたいになってきてるよっ!!



 ふわぁ〜……。
 朝からわたし、教室で大あくび。
 
 四月の日差し、すっごくぽかぽか〜。気を抜くと、夢の世界にワープしちゃいそう。
 うとうと、夢と現実を行ったり来たり。
 授業中、寝ないようにがんばらないと……。
  
 実はね……。ヒーラーのことが気になって、最近なかなか眠れないんだ。
 初変身から、一週間。
 ヒマリちゃんとツユくんが、何か知っているかもしれないっていう「王子様」をさがしてくれてるんだけど。
 ぜんぜん見つからないみたい……。
 
 わたしも協力したいけど、王子様とは会ったことない。これじゃあ、ぜんぜん力になれないよね……。
 ふわぁ……。

 むにゃむにゃしかけてたら、突然ガタッとイスの音。となりにだれか座った気配。
 ——みなとくんだっ!
 うれしくて、一気にパチッと目が覚めた。
  
「おはようっ」
「……おはよ」
 ウッキウキであいさつしたけど、お返事はそっけない。これが多分いつも通り。
  
 この子は瑠璃川湊くん。わたしの幼なじみ!
 宝石みたいな青い瞳が、とってもきれいなんだよ!
 
 ただ……昔はすごく仲良しだったけど、今はちょっと気まずい感じ。
 あいさつは返してくれるんだけど。それ以上、会話が続かない。
 昔みたいに、仲良くおしゃべりしたいなぁ……。
  
 すると、みなとくんはカバンから一冊の本を出した。
 わわっ、すごい大きさ。辞書みたい……!
「——ん、何?」
 話しかけられて、ドキッとした。
 わたしがじろじろ見ちゃってたからだ!
 
「わわっ、ごめんねっ! すごい分厚いの読んでるなーって」
「……別に。調べ物」
 ぷいっと、そっぽを向かれちゃった。
 
 仲良しだったときは、にっこり優しくほほえんでくれたけど。
 今はクールなポーカーフェイス。
 仲直り、あきらめないとかなぁ……。
  
 *
  
 ホームルームが終わって、カバンに荷物を入れていたら。
「すみー!」
「ゆずちゃん!」
 お友達の、ゆずちゃん——香本柚希ちゃんだ!
 
「見学行こっ、楽しみ!」
「うんっ!」
 わたし、ウッキウキでうなずいた。
 今日から部活の仮入部期間。いろんな部活を見学できるんだって!
 中学生になったんだもん、部活入ってみたいよね!
  
「るりりんも一緒にどう?」
 ゆずちゃんが、みなとくんに話しかける。
「僕はいい。部活入らないから」
「そなの?」
「うん。白羽さんと行ってきて」
 そう言って、みなとくんは目も合わせず帰り支度。
 
 ……「白羽さん」。
 
「そっか。じゃあまた明日! すみ、行こーっ」
「う、うん」
 ゆずちゃんにうなずいて、無理やり足を動かした。
 
 ——白羽さん。
 その呼ばれ方に、ちょっとだけ胸がチクッとした。
 
 昔は「すみちゃん」って呼んでくれたけど。今は他人みたいな苗字呼び。
 ……やっぱり、みなとくんに嫌われてるのかも。