【更新停止】ハナコトバマジック!

 アジトに帰ってきて、ため息。
 ジンさんとラナさんが、一瞬僕——瑠璃川湊の方を見る。
 この二人は、敵幹部——僕の同僚だ。
  
 ジンさんは、怖そうに見えるけど仲間思いだし。
 ラナさんは、おしとやかで面倒見がいいし。
 二人とも、すごく静かで大人っぽい。
 僕なんかみたいな、中途半端な人間とは大違いだ。
 
 ……はぁ。
 しょんぼりしながら、自分のイスに座った。
 
 負けてしまった。 
 そう、だよね。僕なんかが、すみちゃんに勝てるはずがないんだ。
 僕は、優しいヒーラーじゃないから……。
 
 そもそも。あの三つのクリスタルは、すみちゃんのことを選んだ。
 だったらあれは、すみちゃんの物だ。
 誰かの物を奪おうとするなんて、悪いことだっていうのはわかってる。
 
 ——わかってるけど。
 じゃあ、僕はどうしたら——?
 
 コトッ。
 僕の前に、何か置かれた音。
 紅茶と、プリン……?
「淹れすぎたから、あげるわ」
「ん。買いすぎたからな」
「あ、ありがとうございます……?」
 ほわっと、優しい香りがした。
 ——どうして。
 
 どうして——僕なんかに、こんなに良くしてくれるのだろう。
 
 *
  
 辞書みたいな本を出す。
 きっと、ここに何か書いてあるはずなんだ。
 アジトで見つけた時、すごく厳重に保管されていたから。まぁ、セキュリティガバガバだったからすぐに突破できたけど。
 花の力について。僕たちが使う呪いについて。
 フラワーヒーラーとの、違いについて。
 一心不乱に本をめくって……ピタ、と、とあるページで手が止まった。
  
 ——見つけた。
 
 まさか、こんな形で願いを叶えることができるなんて。
 本を持つ手が震える。
 もう、クリスタルは集めなくていいんだ。
 すみちゃんたちとも、敵対しなくていいんだ。
 誰のことも傷つけずに、僕の願いを叶える方法。
 
「行ってきます」
「おい、待て。お前、どこに行くつもりだ?」
 立ち上がったら、ジンさんが僕の肩を掴んだ。
 
「どこって……願いを叶えるために、」
「ダメよ、休みなさい。アナタ、力を使いすぎよ」
 ラナさんが、強い口調で僕を止めた。
 そんな。これくらい、平気なのに。
  
「クリスタル集めなら、後からでもできるでしょう。とにかく今は休んで、」

「——大丈夫です」
 ラナさんの言葉に被せるように。
 そう言って僕は、力なく笑った。