Stellar Express

本当に、


「僕をどこかへ連れて行ってくれるんだ」


リュックの紐を握りしめ、僕は好奇心のままに車内の奥へと歩き出した。

車両と車両を繋ぐ重い木製の扉を開けるたび、



ギーガラガラ



心地よい木の音と微かな冷気が頬を撫でる。


誰もいない。


二両目も三両目も、ガラ空きだ。

まるで世界で僕一人のために用意された特急列車のようだった。



けれど、四両目の扉の前に立ったとき。


そのガラス窓の向こうから、信じられないほど場違いな、賑やかな声が聞こえてきた。

「あはは! 何これすごーい! マジで空飛んでんじゃん! ヤバ、超ウケるんだけど!」


嘘だろ。陽キャ?ギャル?


扉の向こう、一番奥の車両にいたのは、首に大きめのヘッドホンをかけ、ぶかぶかのグレーのパーカーを着た一人の女子高生だった。

彼女は座席の上に土足で立ち上がり、窓にペタリと顔を貼り付けて、はしゃぎ倒している。


「おーい、下の人たち見てるー!? 私、特急で宇宙旅行中でーす! ……って、スマホ圏外かよ!
「インスタのストーリー上げられないのウケる!」


一人で喋り、一人でツッコミを入れ、ゲラゲラと笑っている。

あまりのテンションの高さとうるささに、僕はドアの手前で完全に圧倒されて立ち尽くした。

僕と同じように現実に絶望した奴が乗る列車じゃなかったのか。なんでこんな、陽キャの塊みたいな奴がここにいるんだ。







車両の一番奥の窓際にぽつんと置かれた、古びた黒いアップライトピアノ。

その前に信じられないくらい小さな背中が、丸まるようにして座っていた。


誰だ。子供?



首には大きめのヘッドホン。

着慣れていないようなぶかぶかの私服のグレーのパーカー。

フードを深く被った彼女の肩は、糸のように張り詰めていて。