ーーー大学3年の初夏。
バイト中。
「いらっしゃいませ──」
入口を見た瞬間。
思わず固まった。
「……え?」
湊だった。
しかも1人じゃない。
男の人が2人。
白衣こそ着ていないけど。
なんとなく分かる。
たぶん医学部の友達。
湊もこちらに気付く。
そしてすぐに笑った。
「来てみた」
「聞いてない」
思わず笑う。
「言ってないから」
当然だった。
「こんにちは」
後ろの2人から会釈をされる。
「初めまして」
私も慌てて頭を下げた。
「湊の友達です」
「噂の莉桜ちゃん?」
「うわ、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
「ほんとだ」
「湊いいなー」
2人が口々に言う。
恥ずかしくなる。
「そんなことないです」
「あるある」
「めっちゃある」
「写真より可愛い」
「おい、やめろ」
湊が割って入る。
そう言いながらも。
少しだけ嬉しそうな表情。
私は苦笑する。
「お席ご案内しますね」
仕事に戻る。
でも。
少しだけ気を遣った。
昨日の夜。
また怒られたばかりだったから。
余計なことはしない。
ちゃんとする。
そう思いながら。
3人を席へ案内した。
ーーキッチン裏。
「来てたね」
紅羽がニヤニヤしている。
「びっくりした」
私は苦笑する。
「みんな医学部でしょ?」
「うん」
「いーなー!今度紹介してよー」
「お前はまたそれか」
新が呆れる。
「だって未来の医者だよ?」
「黙れ」
「ひど!」
笑いが起きる。
「莉桜知ってたの?」
琉生が聞く。
「全然」
「だからびっくりした」
「莉桜を見に来たかったんじゃない?」
ニヤニヤしながら紅羽が言う。
私は少しだけ笑った。
そうかもしれない。
そうであってほしい。
そう思った。
