君の隣で、私になれた



「自分で言うんだ」

「事実だから?」

女性客たちが笑う。


すぐに誰とでも仲良くなる。

ほんとにすごい。

ただ…


「琉生」

新くんが呼ぶ。

「それ7番じゃなくて6番」

「あ、間違えた〜」

「またかよ、覚える気ないだろ」

「あるある。惜しかったなー」

「惜しくない」


適当。

本当に適当。


でも紅羽と同じで間違えても怒られない。

むしろ…、


「琉生くーん!頑張れ〜」

「ありがと〜♡」


応援されている。

そして相変わらずチャラい…。




そして私はというと、

覚えることにとにかく必死だった。


私には紅羽や琉生くんみたいな。

並外れたコミュニケーション力はない。

新くんみたいな冷静な判断力もない。


でも人より記憶力には自信がある。

だからとにかく覚える。


席番号。

メニュー。

ドリンク。

伝票。


1つずつ慎重に確認する。


それもあってなんとかミスなくできている。



その後も…


紅羽。

「これどこだっけ?」

「それは2番テーブル!」

「ありがと!」


琉生くん。

「これ合ってる?」

「違う、こっち!」

「おっけー!」


なぜかすべて聞いてくる2人。

でも頼りにされるのは素直に嬉しい。




最後に新くん。

みんなが困った時。

辿り着くのが新くんだった。


「新ー!」

「新くん」

みんな聞く内容は同じ。


「これどうすればいい?」


「それ先にやった方が効率良い」

「それは2番行ってそのままこれ3番」

「その伝票違う」


冷静。正確。無駄がない。


たぶん4人の中で1番すべてを理解してた。





ーー退勤後のバックヤード。


「初日にして順調だったよね!疲れた〜!」

机に突っ伏せて伸びている紅羽。


「ほぼ莉桜と俺でな」

新が言う。

「うるさい!」

「反論は?」

「できない!」

4人で笑う。



たった数時間。


それだけなのに。

もう初対面の空気がどこにもなかった。