「俺だって怒りたくて言ってるわけじゃない」
「うん」
「心配だから言ってる」
「うん」
両方の頬に触れられる手。
寄せられる顔。
お互いの額がくっつく。
「ちゃんと分かってる?」
「分かってる」
満足そうに湊が笑う。
その瞬間だけ。
優しい彼氏に見えた。
ーー夜中。
薄暗い寝室。
ベッドの上。
冬なのにシーツが汗で湿る。
いま何時かわからない。
私はもう体が限界で動けない。
湊は横に座って水を飲んでいる。
私の頭を撫でる手。
その手が耳、首、胸へと下がってくる。
そしてそこで止まって捕まえる。
「莉桜」
「…ん」
静かな声。
ゆっくり動く手。
「ここ、俺以外にはもう絶対見せないで」
湊の指が谷間をなぞる。
「約束出来る?」
「うん」
「お利口さん」
そしてまた私の頭を優しく撫でる。
「莉桜って自分が可愛いの分かってないよね」
思わず苦笑する。
「そんなことないよ」
「ある」
即答。
「莉桜は本当に危機感ないから」
私は少し困ったように笑う。
「優しくされたら信じるし」
「友達だからって油断する」
「俺が心配することばかりする」
「だからいつも怒られるんだよ」
責めるような言い方じゃない。
本当に困ってるみたいな声。
「ごめん」
「謝らなくていい」
私の頬に触れる。
「ちゃんと分かってくれればいい」
「うん」
視線が合う。
「お前のこと好きだから言うんだよ」
優しい声だった。
「守ってあげれるの俺だけだから」
「うん」
「だから俺の言うことちゃんと聞いて」
また湊の手は私の頭を撫でる。
子供をあやすみたいに。
「俺の言うこと聞いてれば大丈夫だから」
そう言って笑う。
その笑顔は優しかった。
大丈夫。
私はちゃんと愛されてる。
