君の隣で、私になれた



「でも2人も立ち上がってたじゃん」

「いや」

新が首を横に振る。

「行こうと思ったら終わってた」

「ほんとそれ」

琉生も笑う。

「俺らは完全に見てただけ」


紅羽が吹き出す。

「たしかに2人とも固まってた」

「固まってない」

否定する新。

「いや固まってたな」

肯定する琉生。

また笑いが起きる。




少しして。

琉生がふと私を見る。


「でもほんと意外だった」

「何が?」

「莉桜、ちゃんと言えるんだな」

「?」

よく分からない。

「何それ」

「いや別に」

琉生は少しだけ笑う。

それ以上は何も言わない。



「莉桜」

横を歩く紅羽が私の腕に自分の腕を絡める。

「ん?」

「私、莉桜のこと大好き」

「急に何」

「だって…」

紅羽が笑う。


「優しいし、守ってくれるし、一途だし」

「しかも可愛い、最高じゃん!」

「褒めすぎ」

大げさすぎる紅羽に笑う。

「ほんとだもん」

けど紅羽は真顔で言う。


「莉桜が男だったら絶対付き合いたい」

一瞬静かになる。

「やめとけ、莉桜が苦労する」

呆れたように新が言う。

「たしかに。紅羽めんどくさいし。」

琉生が頷く。

「ひどい!!」

笑いが起きる。


「でもほんと…」

紅羽が私の方を見る。

「莉桜みたいな人と付き合いたい」

少し照れたように紅羽が笑う。


私は少し困ったような顔で笑う。

「ありがとう?」

「疑問形やめて」

また笑いが起きる。


紅羽は絡んだ腕をぎゅっと掴む。


私は少しだけ笑う。

その温もりがなんだか嬉しかった。



ー…


後ろで。

その様子を見ていた琉生が小さく目を細める。


紅羽のためなら怒れる。

傷付いたら傷付いたと言える。

言いたいこともちゃんと言える。


なのに。

なんで自分のことになると何も言わないんだろう。



その時の俺はまだ知らなかった。

莉桜が1番我慢してる相手のことを。


その笑顔の裏側を。