君の隣で、私になれた



ーー帰り道。

レンタカーを運転する新。

助手席に座る私。

後部座席で爆睡する紅羽と琉生。


「…」

「…」

静かな車内。


ふとバックミラーを見る。

紅羽は琉生にもたれて寝ている。

琉生は口を開けて寝ている。


「平和だな」

新が言う。

私は思わず笑う。

「ほんとに子供みたい」

「2人ともな」

「うん」


しばらく車が走る。

外を見ながら海での会話を思い出す。


「新」

「ん?」

「恋愛しないの?」

新は少し考える。

「しないわけじゃない」

「でも必要ない?」

「まぁ」

信号で車が止まる。


「なんで?」

新は前を向いたまま答える。

「面倒だから」

私は少し笑う。

「それ理由になってないよ」

「そうか?」

「そうだよ」


「好きな人とかいなかったの?」

少し黙る新。

「…いた」

「え?初耳…」

私は驚いて新を見る。

「言ってないからな」


新は続ける。

「付き合ったこともある」

「それも初耳」

「聞かれなかった」

新っぽくて少し笑う。

「なんで別れたの?」


長い沈黙。

「価値観」

そして短い返事。


これ以上聞くつもりはなかった。

新があまり話したくなさそうだったから。


「そっか」

それだけ返す。



しばらくして窓の外を見ながら呟く。

「私は好きな人と恋愛して結婚したいな」

新は穏やかな表情で笑う。

「莉桜らしいな」

「変かな?」

私が聞くと新は少しだけ考えて、

「いや」

そう言った。


「お前はそのままでいろよ」


予想しない言葉に驚いて新を見る。

いつもどうりの顔。


でも。

その言葉は少しだけ優しかった。


「うん」

私は小さく笑う。


信号が青になって走り出す車。

新は前を向いたまま小さく息を吐く。




『好きとか、永遠とか、運命とか。』

『そういうのを信じられるやつは羨ましい。』



新がそんなことを思っていたなんて。

私は知る由もなかった。