『だから見てないと危ない』
その言葉が少しだけ残る。
別に変じゃない。
実際、莉桜は無理をするタイプ。
真面目だし責任感も強い。
だから心配する気持ちもわかる。
でも頭の中に前に見てしまったLINEが浮かぶ。
見てないと危ない。
心配だから。
たぶんそういうことなんだろう。
なのに。
なぜか少しだけ引っかかった。
突然、紅羽が思いついたように手を叩く。
「あ、そうだ!今度みんなでご飯…」
「莉桜」
それに被せるように湊さんが莉桜を呼ぶ。
「あ、うん」
莉桜がすぐ反応する。
「寒い、そろそろ帰るぞ」
「うん、ごめんねっ」
「…」
会話がそこでおわる。
紅羽はとくに何も気にしていない様子。
「じゃあまたねー!」
そして2人に手を振る。
「お疲れさまです」
新が軽く頭を下げる。
「お疲れ」
湊さんも返す。
車へ向かう2人。
助手席のドアを開ける莉桜。
湊さんが莉桜に何か言う。
声は小さくて聞こえない。
そして莉桜が「あ、ごめん」と少し笑う。
そのまま助手席へ乗り込む。
走り去る黒のセダン。
ーーその後。
「ねぇ、やばくない!?」
真っ先に口を開いたのは紅羽。
「かっこよかった!優しかった!頭良い!」
「しかも車持ち!完璧じゃん!!!」
「うるさい」
新が言う。
「でもまぁ普通に良い人そうだったな」
「だよね!?」
紅羽は満足そう。
「…」
この前のLINEの湊さん。
今日の湊さん。
どっちも本当なんだろう。
ただ1つだけ。
莉桜がずっと湊さんの顔色を見ていた気がした。
「俺らも帰るか」
そう言って歩き出す。
この時はまだ。
違和感の正体なんて分からなかった。
