ーーー社会人3年目の夏。
恋人になって初デート。
家の前。
「おはよー」
「おはよう!」
莉桜が助手席へ乗る。
付き合って初めて“彼女”として。
「今日どこ行くの?」
「水族館」
「え!やった、楽しみ!」
楽しそうに笑う莉桜。
その笑顔を見るだけで。
今日誘ってよかった。
そう思った。
ーー水族館。
チケット売り場。
「私も払うよ!」
財布を出す莉桜。
「いらない」
「なんで?」
「初デートだから」
「……彼氏みたい」
「彼氏だから」
自分で言って少しだけ頬が緩む。
「ふふっ。」
照れながら笑う莉桜。
その笑顔だけで。
また可愛いと思ってしまう。
館内の暗い通路。
何も言わず自然に手を繋ぐ。
恋人繋ぎ。
「……。」
一瞬だけ莉桜の肩が跳ねる。
それでも指を絡め返してくる。
可愛い。
前なら手を繋ぐ理由を探してた。
でも今は理由なんていらない。
クラゲの大水槽。
「綺麗……。」
夢中で見上げる莉桜。
その一歩後ろへ立つ。
そっと頭へ顎を乗せた。
両手は軽く肩へ。
「っ……!」
身体が小さく固まる。
「近い……」
小さく笑う。
「うん、彼女だから」
「もう……。」
莉桜は耳まで真っ赤。
反応が可愛すぎてやばい。
付き合う前なら普通にしてたのに。
“彼氏”
その一言だけで。
こんなに照れるんだ。
イルカショー。
後ろの席。
水しぶきは届かない。
イルカがジャンプするたび。
「すごい」
嬉しそうに笑う莉桜。
肩へ自然に腕を回す。
「大丈夫?見えにくくない?」
「うん!」
返事だけしてまたショーを見る。
その横顔を。
本人に気付かれないように。
少しだけ見つめた。
幸せそうに笑う。
それだけで満たされる。
