ーーー社会人3年目の初夏。
ーー琉生side.
「今日さ、少し寄りたいとこある」
助手席の莉桜が笑う。
「いいよ!」
仕事終わり。
いつものように羽田まで迎えに行って。
ご飯を食べて。
他愛もない話をして。
車を走らせる。
いつも通り。
……のはずだった。
でも今日だけは全然違う。
営業中も。
ご飯を食べてる時も。
運転してる今も。
ずっと。
『今日、気持ちを伝える』
それだけが頭の中を巡っていた。
海沿いの駐車場へ車を停める。
「少し歩こ」
「うん」
夜風が心地いい。
波の音だけが静かに響いていた。
2人並んで歩く。
しばらくお互い喋らない。
「莉桜。」
足を止める。
「ん?」
振り返った莉桜と目が合う。
ここまで来て。
初めて少しだけ怖くなった。
もし笑われたら。
もし困らせたら。
もし全部が勘違いだったら。
でも。
もう引き返したくなかった。
「俺さ。」
少し笑う。
「今まで恋愛って全部受け身だった」
「誰かが俺を好きになって、」
「俺はその手を取るだけ」
「だから……」
静かに息を吐く。
「自分から好きになったのは」
「莉桜が初めて」
莉桜が静かに目を見開く。
「自分から好きになって、」
「こんなに苦しいなんて知らなかった」
「毎日会いたいって思うし、」
「笑っててほしい、守りたい、」
全部。
初めてだった。
「莉桜。」
一歩近付く。
「莉桜のことが好き」
「友達としてじゃなくて、」
「一人の女性として好き」
「俺と付き合ってください」
静かになる。
波の音だけが聞こえる。
