「まだ返事してないから」
「ええええ!?」
「なんで!?」
「なんでって…」
言葉に詰まる。
自分でもわからないからだ。
湊とはもう7年以上付き合っている。
高校大学とずっと一緒だった。
好きだった。
今も嫌いになったわけじゃない。
なのに…
「結婚しよう」
そう言われたあの日から。
胸の奥に、小さな違和感は居座り続けている。
「まあでも…莉桜と湊くんならきっと大丈夫だし、絶対幸せなるでしょ!なんの根拠もないけど!」
紅羽が笑う。
「さすがに根拠持てよ。まぁでも長いしな」
新も続く。
私は曖昧に笑った。
その時だった。
「……」
ふと視線を向ける。
何も言わない琉生。
いつも通りの顔、いつも通りの笑顔。
なのに、
なぜか一瞬だけ、本当に一瞬だけ。
何かを飲み込んだような…そんな様子に見えた。
気のせいかな…?
「琉生?どうしたの?」
「ん?別に」
そう言っていつもの顔で笑う。
何も変わらない笑顔だった。
ーーー帰り道。
駅へ向かう人波の中を1人で歩く。
6月の夜風が少しだけ肌寒い。
スマホが震えた。
画面には、見慣れた名前。
『湊 着信』
少しだけ息を吐いてから通話ボタンを押した。
