君の隣で、私になれた



ーー紅羽side.


「お待たせー!」

伊酒屋の個室へ入る。


「あ、紅羽!」

「おつかれー」

2人が同時にこっちを見る。


……やっぱり隣なんだ。

席なんて誰も決めてない。

なのに気付けばいつも。

琉生の隣には莉桜がいる。


「何飲む?」

メニューを開きながら。

琉生が莉桜を見る。

「莉桜、レモンサワーだろ?」

「うん!」


料理が並ぶ。

話しながら食べていると。

琉生が笑いながらいつものように。

莉桜の肩へ腕を置く。


そのまま。

何事もなかったみたいに話を続ける。

莉桜も普通に笑ってる。


莉桜の前髪がふわっと頬へ落ちる。

琉生がさらっと耳へかける。

「ありがと」

また笑う。


「はい、莉桜」

ポテトを一本。

琉生が莉桜へ差し出す。

「ありがと!」

ぱく。

「やっぱ美味しいー」

「もう一本!」

「あと自分で食え」

「はーい」

2人で笑い合う。


その時。

「あ。」

莉桜の口元に。

ほんの少しだけ塩が付く。

「こっち向いて」

琉生が親指でさらっと拭う。

「ありがと」

それだけ。


照れもしない。

嫌がりもしない。

本当に当たり前みたいに。

受け入れてる。


しばらくして。

「ねぇ、そういえば!」

莉桜が何か思い出したように。

琉生の肩へ。

ぽん、と手を置いた。

「あのさ──」

そのまま楽しそうに話し始める。


……。

私は思わず新を見る。

新も私を見る。


何も言わない。

でもたぶん。

同じことを思ってる。


琉生はもう隠してない。

莉桜が好きって誰が見ても分かる。


いや、分かるようにしてる。


そして莉桜も。

少し前に言ってた。

『距離近い人ってちょっと苦手かも』

……なのに。

肩に触れられても、髪に触れられても。

唇に触れられても。

全部。

自然に受け入れてる。


それどころか。

自分から琉生へ触れてる。


……やっぱり。

相手が琉生だからなんだ。


もうこの2人。

傍から見たらどう見ても恋人だった。

そして。

私は今日もう一つ確信した。



琉生。

本気なんだね。