君の隣で、私になれた



「……今日」

莉桜がこっちを見る。

「楽しんでくれた?」

「うん。」

迷いなく頷く。

「すごい楽しかった!」

「連れてきてくれてありがとう」


その笑顔を見た瞬間。

自然と言葉が出た。


「……可愛い」


莉桜が少し目を丸くする。

「その笑顔見れただけで」

「俺は今日、大満足」

冗談じゃない。

からかいでもない。

ただ本当にそう思った。


莉桜は何も言わない。

でもまた少し。

顔が赤い。


「……ありがとう」

小さな声。


その時。

観覧車がふわっと揺れた。


「わっ。」

バランスを崩した莉桜が。

俺の方へもたれかかる。

肩が触れる。

顔が近い。


目が合う。

数秒。

お互いに何も言わない。


さっきまでなら平気だった距離。

なのに今は少し違う。


先に莉桜が目を逸らした。

俺も少し遅れて視線を外す。


観覧車は。

静かに頂上を越えていった。



ーーー…


帰り道。

車は静かな住宅街へ入る。


行きとは違って。

二人とも。

あまり話さなかった。


流れる音楽と。

時々目が合って笑うくらい。

それだけで十分だった。



「着いた」

車を停める。


「今日はありがとう!」

助手席から降りようとした莉桜が。

振り返って笑う。

「こちらこそ」


ドアを開ける音。

その背中を見ながら。

気付けば名前を呼んでいた。


「……莉桜」

「ん?」

莉桜はまた振り返る。


少しだけ間を置いて。

「……今日、楽しかった」

莉桜がふっと笑う。

「私も!」

その笑顔を見て自然と口元が緩む。

「だから……」

「また2人で会お」


ほんの少しだけ目を丸くしたあと。

莉桜はいつもの笑顔で頷いた。

「……うん!また遊ぼ!」

「うん。」

「じゃあね!」

手を振る。


家の中へ入っていく背中を。

見えなくなるまで見送って。

ゆっくり車を走らせた。