その時。
「ごめーーん!!」
遠くから紅羽が走ってきた。
「仕事長引いたー!」
息を切らしながら笑う。
その声で。
張りつめていた空気が。
少しだけほどけた。
私は一度だけ。
静かに後ろを振り返る。
3人とも何も言えず。
その場に立ち尽くしていた。
ーーー残された女子たち。
3人が去ったあと。
しばらく。
誰も口を開かなかった。
やっと一人が息を吐く。
「……なにあれ。」
「怒ってるの初めて見た」
「怖かった」
別の子が首を振る。
「怖いじゃない……」
「あれは本気だった」
また沈黙。
「ねぇ……もう分かった」
誰かが小さく笑う。
その笑顔は。
悔しさで歪んでいた。
「好きじゃん」
誰も否定しなかった。
「私たちには…」
「一度もあんな顔したことない」
「怒ったこともない」
「車にも乗せない」
「2人で遊ばない」
「でも莉桜ちゃんにだけ」
「全部する。」
「しかも琉生が自分から。」
「今日だってあんなふうに守る」
一人が静かに呟く。
「勝てるわけないじゃん」
