君の隣で、私になれた




胸が苦しくなる。

そんなつもりじゃなかった。

ただ事実を話しただけ。


どう答えても。

空気は悪くなる気がした。



その時。


「莉桜。」


聞き慣れた声。

振り向く。


「琉生……」

少しだけ安心する。

「ごめん、待たせた」

「紅羽は仕事長引いてるって」

いつもの笑顔。


……だったはずなのに。

女子たちを見る。

その瞬間。

琉生の表情が消えた。


「琉生!」

「莉桜ちゃんと偶然会ってさ!」

「ちょっと話してただけ!」

みんな急に笑顔を作る。

「へぇ」

でも琉生は笑わなかった。


「全部聞いてた」

静かな声。

それだけで空気が止まる。


「お前ら。」

「勝手に勘違いして」

「勝手に嫉妬して」

「その感情なんで莉桜に向けてんの?」

誰も答えない。


「相手が言い返さない」

「そう思ってるから?」

「優しいから言っていいと思った?」


怒鳴ってない。

なのに。

声も表情もとても冷たかった。


「ダサいことすんなよ」

「琉生!」

一人が慌てて笑う。

「違うって!」

「そんなつもりじゃ……」


琉生はゆっくりその子を見る。

その目だけは少し怖かった。

「じゃあ。」

「どういうつもりだった?」

「……。」

誰も答えられない。


「答えられないならもう関わんな」

少しだけ間を置く。

「少なくとも莉桜には」


琉生が怒ったとこなんて。

今までで一度も見たことなかった。

こんな琉生、初めて見た。


「莉桜行こ」

今度はいつもの声だった。

私を見る目だけが。

少し柔らかい。


「……うん。」

小さく頷く。