君の隣で、私になれた



「……。」

新は何も言えずに黙ってる。

紅羽が少しだけ笑う。

「でね、そのことを大学の頃から」

「琉生だけは知ってたんだって。」


「え?」

新がこっちを見る。

俺は頷いた。

「1回だけ…相談された」

「でも本人が言わない限り、」

「俺から話すことじゃないと思ってた」


本当は。

何度も聞きたかった。

何度も助けたかった。


でも俺は。

ただの友達だった。


それ以上でもそれ以下でもない。


だから。

踏み込まなかった。



莉桜は少しだけ笑う。

「ありがとう」

「ずっと見守ってくれて……」

その笑顔が痛かった。


見守るしかできなかった。

それだけだ。


俺は首を横に振る。

「何もできなかった」

その一言だけ。


また沈黙。


莉桜が静かに呟く。

「しばらく恋愛はいいかな」

その言葉に胸が締め付けられる。


「もう……誰かを好きになるの…」

「ちょっと怖い」


紅羽が莉桜の手を握る。

「ゆっくりでいいよ」

新も頷く。

「今は仕事だけ考えてろ」

莉桜は笑う。



7年間。

本気で好きだった人なんだから。


簡単に次なんて。

考えられるわけがない。




ーー帰り道。


ひとりで歩く。


別れた。


その事実だけなら。

俺の恋は頑張れるのかもしれない。


でも。

そんなこと。

一度も思えなかった。


好きな人が。

あんな顔で笑うようになった。


それが苦しかった。


俺は。

莉桜が好きだ。


今も変わらない。


でも今じゃない。

今。

伝えることだけは絶対に違う。


友達でいい。

隣じゃなくてもいい。


また。

心から笑える日が来るなら。

それまで何年でも待つ。


そう心に決めた。