「私は。」
「湊と喧嘩したかったんじゃない」
「勝ちたかったわけでもない」
「ただ……」
「分かってほしかった……」
涙が止まらない。
「一緒に考えてほしかった……」
「でも…もうできない」
「このまま結婚したら私は……」
「私じゃなくなる。」
「だから、ごめん。」
「別れよう」
湊は何も言わなかった。
長い沈黙。
「……嫌だ。」
小さく。
本当に小さく。
「別れない」
「……。」
「俺は認めない」
涙が止まらない。
「ごめん。」
私は玄関へ向かう。
「待て…」
振り向かない。
「莉桜……!待って…」
ドアノブに手をかける。
後ろから。
「行くな……」
初めて聞く弱い声だった。
「お願いだから。」
「行かないでくれ……」
胸が苦しくなる。
でも、もう戻れない。
静かにドアを開ける。
「莉桜!!」
振り向かない。
そのままドアが閉まる。
部屋の中から。
何かが倒れる音がした。
私は立ち止まらない。
立ち止まったら。
きっと戻ってしまうから。
だから。
涙を拭いて前だけを見て歩いた。
