ーー莉桜side.
車のドアが閉まる。
重い沈黙。
お互いに何も話さない。
街の明かりだけが。
窓の外を流れていく。
手首が少し痛い。
さっき。
強く掴まれたところ。
それでも。
何も言わなかった。
言えなかった。
車はそのまま。
湊のマンションへ入る。
ーー部屋に入る。
ドアが閉まる音だけが。
静かに響いた。
「座って。」
低い声。
私は立ったまま。
「……。」
湊も立ったまま。
しばらく沈黙。
先に口を開いたのは湊だった。
「さっきなんで神崎庇った?」
「庇ってない」
「じゃあ何?」
「友達を巻き込まないでって」
「俺には庇ったように聞こえた」
「違う、庇ってない」
「違わない」
「違うって」
「何が違う」
「琉生だからじゃない」
「誰でも……」
「友達があんな言われ方したら嫌だよ」
「神崎だからだろ」
「違う!」
初めて少しだけ。
声が大きくなった。
「琉生だからじゃない」
「紅羽でも、新でも、同じこと言う」
湊は笑わなかった。
「神崎だけ特別なんだろ?」
「違う!」
「じゃあなんで。」
「毎回、神崎だけ助ける?」
「……。」
言葉が出ない。
違う。
そうじゃない。
でも。
何を言っても伝わらない。
「仕事もそう。結婚もそう。」
「全部、俺より自分優先」
「違うよ……」
「私はずっと湊と話し合いたかった」
「話し合ってる」
「こんなの話し合いじゃない」
「私は一緒に考えてほしかった」
「でも湊は答えを決めてる」
「辞めろ、家にいろ、」
「それしかないって。」
真っ直ぐに湊の方を見る。
「だから何を言っても変わらない」
