君の隣で、私になれた



「私、仕事辞めたくない」

「やっと叶えた夢だから……」

「ちゃんと話したの」

「どうしたら安心してもらえるか」

「一緒に考えたいって。」

「でも……方法なんてない。」

「辞めればいいだけって言われた」

紅羽は黙ったまま。

私の話を聞いてくれる。


「最近、お酒飲まなかったのも」

「2軒目行かなかったのも」

「全部そういう約束だったの」


そこで初めて紅羽が口を開く。

「え……じゃああれ全部?」

「うん、湊との約束。」

紅羽はまた黙る。


「大学の頃も少しだけあったの」

「一回ちゃんと話して」

「良くなったと思ってた。」


「でも……社会人になって、」

「また戻っちゃった」


「そして実は…琉生だけは知ってる」

「え?」

紅羽は目を見開く。

「大学の時に気付かれて……」

「少しだけ話したことがあるの」


納得したように頷く紅羽。

「なるほど…だから琉生いつも……」

そして小さく呟く。

「あの日、解散!って言ったのも」

「全部ほんとは私のせい」


「でも琉生には。」

「今のことは何も言ってない」

紅羽も頷く。

「……うん、私からも言わない」

その一言だけだった。



それから。

少しだけ沈黙。



紅羽がグラスを置く。

「莉桜。私は…」

「別れた方がいいとも、」

「別れない方がいいとも、」

「今は言えない」

「だって7年だもん。」

「簡単に言えることじゃない」


涙が滲む。

紅羽は少し笑った。


「でもね、一つだけ」

「我慢することが恋愛じゃない」


「私は莉桜が幸せになってほしい」


その言葉で。

張っていた糸が切れた。

涙がこぼれる。


「……ありがと」

それしか言えなかった。



ーー店を出る。



夜風が頬に当たる。


「また飲もうね!」

「4人でも!2人でも!」

「いつでも呼んで!」


紅羽はいつもの笑顔だった。


ひとりじゃない。

そう思えた。


「うん!」

私も笑った。


でも心はまだ。

答えを出せずにいた。


湊のことは今でも大好き。


だからこそ。

どうすればいいのか分からなかった。