ーーー翌朝。
羽田空港。
「おはようございます!」
クルーラウンジ。
今日のブリーフィング。
機材確認。
乗務員紹介。
今日もいつも通り。
「今日もよろしくお願いします!」
笑顔で挨拶をする。
同期も。
先輩も。
副操縦士も。
「よろしくね」
みんなが笑う。
私も笑い返した。
フライト開始。
ドリンクサービス。
「お飲み物はいかがでしょうか?」
同世代の男性のお客様。
「じゃあコーヒーで」
「かしこまりました」
自然に笑う。
その瞬間。
『男全員に笑う必要ある?』
頭の中で湊の声が響いた。
「……。」
手が止まる。
笑顔も固まる。
「お姉さん大丈夫?」
「あ……!」
我に返る。
「申し訳ございません」
慌ててコーヒーを用意する。
サービスを終えて。
ギャレーへ戻る。
「成瀬」
先輩CAだった。
「具合悪いの?」
「え?」
「今日ちょっとぼーっとしてる」
「疲れてる?」
「……大丈夫です!」
反射的に笑う。
でもその笑顔は。
自分でも分かるくらい。
ぎこちなかった。
「そう?それならいいけど…」
「お客様の前では出さないようにね」
「それは絶対に気を付けて」
「はい、すみません」
私は頭を下げる。
先輩に注意されてしまった。
ーー休憩時間。
鏡を見る。
制服姿の自分。
笑ってみる。
「……。」
笑えてるはずなのに。
どこか違う。
ーーフライト終了。
今日も無事に終わった。
「お疲れさまでした!」
いつも通り。
でも。
胸の奥だけが重かった。
帰り道。
スマホが震える。
ーー湊。
『今日もお疲れ』
ーー莉桜。
『ありがとう』
返信する。
画面を閉じる。
「……。」
笑顔はこの仕事で。
一番大切なものだった。
なのに。
笑うたびに誰かの顔色を。
気にするようになってしまった。
仕事なのに。
仕事のはずなのに。
少しずつ。
“私らしく”笑えなくなっていた。
