君の隣で、私になれた



ーーー数日後。


フライトを終えて羽田空港。


「お疲れさまでした!」

同期と手を振る。

今日も無事に終わった。


空港を出ると。

外には見慣れた黒い車。


助手席の窓が開く。

「お疲れ」

湊だった。


「迎えありがとう」

助手席へ乗る。

車が静かに走り出す。


「今日どうだった?」

「忙しかった!」

「でも楽しかったよ。」

自然と笑う。


「今日は修学旅行の子たちもいてね」

「あと副操縦士さんがすごく優しくて、」

「新人だから色々教えてもらって、」


「……副操縦士?」

「うん」

「男?」

「……うん」

少しだけ空気が変わる。


「何歳くらい?」

「30代前半くらいかな?」

「結婚してる?」

「そこまでは知らないよ!」

「休憩も一緒だった?」

「ううん、話したのは業務だけ」

「本当に?」

「本当」

私は苦笑いする。


「湊。仕事だよ?」

「分かってる」

「だから仕事以外で話すなって言ってる」

「話してないよ」


「じゃあ、なんでそんな嬉しそうなの?」

胸が少し痛む。

「今日あったこと話しただけじゃん」

「聞きたくない、男の話。」

全部ちゃんと言ってって言われたり、

聞きたくないって言われたり。

どうすればいいのかわからない。


「そんなこと言われても……」

「それに仕事だから毎日いるよ」

「副操縦士さんも、男性のお客様も、」

「避けるなんて無理」

初めてはっきり言い返した。


「仕事だから!」

「それは仕方ないよ」

車の中が静かになる。

家に着く。


「お茶淹れるね」

私はバッグをソファへ置く。


その瞬間。

パサッ。

何かが床へ落ちた。


白い名刺。

一枚。

二枚。

三枚。

すべて裏に手書きのLINE ID。

『よかったら連絡ください』

『またお会いしたいです』

そんな文字。


しまった。