君の隣で、私になれた



席へ座る。


搭乗は終わり。

さっき見えたCAの中には。

莉桜はいなかった。


(まぁ、そうだよな。)


シートベルト着用サインが点灯する前。

CAたちが通路を歩いて確認していく。


「失礼いたします」

聞き慣れた声。


「……!」

顔を上げる。

「……!」

目が合った。


一瞬だけお互い止まる。

そしてお互いに目を見開く。

莉桜だった。


でも、次の瞬間には。

「シートベルトのご確認をお願いいたします」

綺麗な笑顔。

仕事の顔。

俺にも、隣の上司にも、

同じように微笑んで。

そのまま次の列へ向かう。


「……。」


すげぇ。

ちゃんとCAだ……


大学で見ていた莉桜とは違う。

落ち着いていて。

綺麗で。

誰に対しても丁寧で。

仕事をしている姿が眩しかった。


離陸して少しして。

シートベルト着用サインが消える。


「失礼いたします」


ドリンクサービス。

ワゴンを押しながら。

莉桜が近付いてくる。


「お飲み物はいかがですか?」


仕事用の笑顔。

俺を見る目も。

他のお客様と何も変わらない。


「…アイスコーヒーで」

「かしこまりました」

俺の隣。

「お客様は?」

上司が莉桜を見ながら笑う。

「じゃあ俺もアイスコーヒーで」

「かしこまりました」


丁寧な所作で。

2人分のドリンクを置く。


「ごゆっくりお過ごしください」

軽く会釈して。

そのまま次の列へ。


「おい。」

上司が小声で言う。

「今の子、美人すぎない?」

思わず笑う。

「ですね」

「俺あの子タイプ!」

「連絡先渡してみようかなー」

「……駄目です」

「なんで?」


「…実は友達なんですよ」

「……は?」

上司が固まる。