君の隣で、私になれた



そのまま、また目を閉じた。


「……。」



なんだよ、その顔。

反則だろ。


胸が苦しい。

さっきから何回も。

何回も。

心臓が勝手に騒ぐ。


近付くだけで。

触れるだけで。

名前を呼ばれるだけで。

なんでこんなになる。




女子部屋。

静かに扉を開ける。


ベッドまで歩いて。

そっと寝かせる。


「……。」


眠ったままの綺麗な顔。


前髪が頬にかかっていた。

指が自然に伸びる。

そのまま。

髪を耳に掛けようとして──


止まる。


違う。

今は触れちゃダメだ。


ゆっくり手を下ろす。

布団だけ肩まで掛け直した。


「おやすみ。」


聞こえないくらい小さく呟く。

静かに部屋を出る。

深く息を吐く。



卒業式で、

何かがおかしいと思った。

京都へ来て、

その違和感は何度も大きくなった。


近付くたび。

触れるたび。

笑われるたび。

名前を呼ばれるたび。


胸が苦しくなる。


でもきっと違う。

これは勘違いだ。


酒も入って距離が近かった。


ただそれだけ。

そうじゃなきゃ説明がつかない。


だって俺は今まで。

誰かを好きになったことなんて。

一度もない。


好きがどんなものかも。

知らない。


こんな気持ち。

分かるはずがない。


だから。


……違う。



そう思いたかった。