その時。
「……ねむ」
隣から。
小さな声が聞こえた。
視線を向ける。
莉桜の瞼がゆっくり閉じかけていた。
眠たそうな莉桜に声をかける。
「莉桜?大丈夫?」
「んー……」
返事になってない。
次の瞬間。
ふらり。
莉桜の体が傾く。
「……!」
そのまま俺の肩へ。
ことん。
体を預けてきた。
「……っ」
髪が頬に触れる。
ふわっとシャンプーの香り。
近い。
ドクン。
心臓が大きく鳴った。
「莉桜もう限界じゃん!」
紅羽が笑う。
「寝かせた方がいいな。」
新も苦笑する。
「えーまだ喋るー!飲むー!」
紅羽は缶を持ったまま。
「琉生!莉桜お願い!」
「部屋に連れてってあげて!」
「はいはい。」
苦笑しながら立ち上がる。
「莉桜、部屋戻るぞ」
「……」
返事はない。
完全に眠そうだ。
仕方なくそっと腕を回す。
「よいしょ。」
そのまま抱き上げる。
やっぱり軽い。
「えー!お姫様抱っこじゃん!」
紅羽が笑う。
「写真撮っとこうかなー」
「やめろ!」
「じゃあ連れて行くわ」
「頼んだ 」
新が軽く手を上げる。
ーー静かな廊下。
旅館の灯りだけが。
足元を照らしていた。
抱きかかえた腕の中。
莉桜は温かい。
温泉上がりだからか。
お酒を飲んだからか。
熱を持った体温が。
腕越しに伝わってくる。
「……ん。」
莉桜が小さく動く。
ゆっくり目を開けた。
「起きた?」
ぼんやりしたまま。
俺を見る。
焦点はまだ少し合っていない。
「……琉生」
名前を呼ばれる。
「ん?」
返事をすると。
莉桜はふわっと笑った。
安心したみたいに力が抜ける。
