君の隣で、私になれた



「軽っ」

横から男友達の声。

「何が?」

「普通教えるのもっと迷うだろ!」

「なんで?」

「なんでって…知らない子だぞ」

「今知り合ったじゃん」

「意味分かんねぇ」

よく言われる。


でも、俺も本当に意味が分からない。

連絡先くらい別にいいだろ。




ーーキャンパスを歩く。


「ねぇあれ経済の神崎くんじゃない?」

「ほんとだ、かっこよ…」

「やばいよね、やっぱイケメンすぎる」

「目の保養だよね」

少し離れた場所から声が聞こえる。


「琉生また言われてんじゃん」

隣の友達が言う。

「聞こえた」

「どうすんの?」

「どうもしない」

そう言いながら。

女の子たちの方を見て軽く手を振る。


「えっ」

「まって、やばい…!」

「手振られた、かっこいいやばい」

女の子たちが騒ぎ始める。


「…お前さぁ、そういうとこだぞ」

「何が」

「距離感バグってる、チャラすぎる」

「また言われた」



残念ながら自覚があまりない。

いや、正確には自分がモテるのは知ってる。

この状況で知らない方がおかしい。


告白された回数も。

連絡先を聞かれた回数も。

数えきれないくらいある。


でも。

だから何?っていうそんな感覚。




「琉生くーん」

振り返る。

経済学部の2こ上の女の先輩。


「お疲れー」

「お疲れさまですー」

「琉生くん今日暇?」

「先輩次第」

「何それ」

「誘ってくれるなら空けますよ」

「軽っ」

先輩が笑う。


「2人で飲み行こうよ」

「奢りですか?」

「図々しいなぁ」

「まぁ後輩なんで」

「可愛くない」

先輩が呆れたように言う。

でも行動は伴ってなくて軽く腕を絡めてくる。


「先輩どうするの?」

「…生意気すぎて腹立つ」

「行かないってこと?」

「…行く。いいよ、奢ってあげる」

「やった。ありがとうございます!」

笑って言うと先輩も笑う。


「ったく調子良いんだから。じゃあまた後でね」

笑いながら先輩は去っていった。