君の隣で、私になれた



「嘘嘘。」

「でも紅羽はもっと自分を大事にして」

「はーい」

返事だけはいい。

「絶対聞いてない」

新が苦笑する。

また4人で笑った。




少し歩く。


「みんな一人暮らしかぁ」

紅羽が呟く。

「最終逃してもいっぱい宿ある!助かる!」

「でた、紅羽ずっとじゃん」

琉生が言う。

「社会人なっても来る気か」

新は軽くため息をつく。

「もちろん!」


「え?」

私は思わず聞き返す。

「紅羽、琉生と新の家にも行ってたの?」

「勝手に来てた」

新が即答する。

「勝手に寝て、勝手に帰る」

「勝手じゃない!ちゃんと連絡した!」


「着く直前の無意味な連絡のこと?」

呆れたように笑う琉生。

「うるさい!」

バンッ。

紅羽が琉生の背中を叩く。

「強っ!」

琉生がいつものようにへらへら笑う。


「あー、でも…」

「紅羽の化粧落としたとこ見たことない」

「毎回そのまま寝てる」

琉生が思い出すように話す。

「俺もない」

新も頷く。


「え?そうなの??」

私は思わず驚く。

「だって!クレンジングないじゃん!」

「だから莉桜んちが一番!」

そう言って。

紅羽が肩を組んでくる。

そのまま頭を預ける。


「莉桜も大変だな」

新が同情するように笑うの。

私は少し笑う。



でも心のどこかで。

少しだけ思った。


知らなかった。

そんな時間が3人にはあったんだ。


大学では。

毎日のように会って。

仲がいいと思っていた。


でも。

私の知らない思い出がちゃんとある。


少しだけ。

羨ましかった。



夕暮れの風が桜を揺らした。