ーーー卒業式のあと。
夕方へ差し掛かる頃。
謝恩会まで少しだけ時間がある。
約束していた桜並木へ向かう。
さっきまで賑やかだったキャンパスは。
もう人はまばらだった。
桜が風に揺れる。
「莉桜。」
聞き慣れた声。
振り向く。
「湊っ!」
私は笑って駆け寄る。
でも、湊は何も言わない。
「……?」
少しだけ目を見開いたまま。
私を見つめていた。
「どうしたの?」
そう聞くと湊は小さく笑う。
「いや、綺麗だなって」
「……。」
照れる。
「もう……。今日みんなそれ言う」
「みんな?」
「うん。」
「友達とか、先輩とか、先生も。」
「そう。」
湊は優しく笑う。
「でも…」
「俺が一番最初に言いたかった。」
「……」
何も言えなくなる。
「莉桜おいで」
穏やかで優しい声。
近付く。
指先がそっと髪に触れた。
「髪、似合ってる」
「ありがとう」
崩さないように本当に優しく。
私の髪を整える。
「あと…」
今度は両手で私の頬を包む。
「え、ちょっと……っ」
「動かないで」
近い。
じっと顔を見られる。
「……っ」
恥ずかしい。
「今日なんか少し大人っぽい」
「メイク?」
「うん。」
「いつも可愛いけど、」
「今日は本当に綺麗だよ」
私の目を見て真っ直ぐに湊が言う。
「もう……。」
思わず目を逸らす。
「照れる……」
その反応を見て。
湊は少し満足そうに笑った。
「…プレゼント」
「え?」
ポケットから小さな箱を取り出す。
「卒業祝い」
箱を開く。
華奢なシルバーのネックレス。
小さな一粒のストーンが光る。
「可愛い……!」
「つけてもいい?」
「うん!」
背中を向けて髪をそっと横へ流す。
首元にひんやりとした感触。
留め具を留める指先が。
耳にかすかに触れる。
「……っ。」
少しくすぐったい。
「もう少し……」
その様子を見て湊は少し笑う。
