君の隣で、私になれた



莉桜を見る。

目の下が少し黒い。


「莉桜、また寝不足?」

「え?分かる?」

「分かる」

「昨日ちょっと本読んでて…」

「またか。どうせ3時だろ」

「……2時半」

「ほぼ一緒」

「一緒じゃない!」

「はいはい」

「適当!」

「うるさい」

莉桜が笑う。


そのやり取りを見て湊さんが少し笑う。

「仲良いね」

「神崎くん、そういうのまで分かるんだ」


俺も笑って答える。

「最近は顔見たら何となく」

「寝不足の時、分かりやすいんで」

「……そう。」

また返事はそれだけ。



湊さんは莉桜の方を向く。

「寒かったろ」

そう言って莉桜の頬へ触れる。

「冷たい」

「え?ほんと?」

莉桜は少し笑う。

「うん」

優しく笑いながら。


今度は首を触る。

「莉桜、マフラーは?」

「今日つけてくるの忘れちゃって…」

「……。」

湊さんは小さくため息をつく。


「風邪ひく」

自分の首からマフラーを外す。

そのまま莉桜の首へ巻く。


「え、湊が寒いじゃん」

「俺は大丈夫 」

莉桜の髪を耳へかける。

その指先も自然だった。


「ありがとう」

莉桜は嬉しそうに笑う。

何も気付いていない。


でも。

俺には分かった。


あの人は。

俺を見ながら莉桜に触れている。

“恋人だけが触れられる距離”

それを静かに見せつけるみたいに。



「神崎くん。」

湊さんがこちらを見る。

「また4人で遊んであげてね」

「莉桜、すごく楽しそうだから」

笑顔。


「あと…」

少し笑う。

「放っておくと無理するから」

「気付いたらまた言ってあげて」


「でも。ちゃんと休ませるのは…」

「俺の役目だから」


穏やかな声。

誰が聞いても自然に聞こえる言葉。


これもまた俺に向けた牽制。