ーーー大学。
ーー琉生side.
三田キャンパス。
経済学部の講義が終わる。
校門へ向かって歩く。
冬の冷たい風。
ふと門の前に立つ男が目に入った。
「……。」
あの日ぶりに見る顔。
「神崎くん」
先に声をかけてきたのは向こうだった。
「久しぶりです」
「久しぶり」
莉桜の彼氏。
湊さん。
少しだけ沈黙が流れる。
その沈黙が居心地悪くて口を開く。
「今日はなんでこっちに?」
「莉桜を迎えに」
「最近忙しくて時間が合わないから」
「…そうなんですね」
また少しだけ静かになる。
湊さんがふっと笑った。
「そういえば…」
「去年はいろいろ大変だったね」
…たぶん噂のこと。
「俺も驚きました」
「学生ってすぐ噂になるから困るよね」
笑っている。
でも目は笑ってない。
「莉桜も結構気にしてた」
「誤解されるのが一番嫌な子だから」
「……。」
知ってる。
そう思った。
でも口には出さない。
「そうですね」
「だから…」
湊さんは穏やかに続ける。
「距離感だけは気を付けてあげて」
「友達として」
一瞬だけ空気が張る。
誰が聞いても普通に彼氏の言葉。
でも分かる。
牽制。
俺は笑った。
「もちろんです」
「俺は…」
「本人が嫌がることはしないんで」
「……」
ほんの一瞬。
湊さんの表情が止まる。
でもすぐに笑った。
「そう。なら安心だね」
また静かな空気。
「莉桜って人を信じやすいから」
「優しい分、勘違いされやすい」
「だから。」
「周りがちゃんと距離を守ってあげないと」
穏やかな口調。
でも。
湊さんが伝えたいことは分かる。
