君の隣で、私になれた



自分でも本当に分からなかった。


なんで莉桜のグラスだけ取ったのか。


ただ。

あのまま飲ませる気にはならなかった。


莉桜を見る。

ソファに寄りかかって。

赤くなった顔でふにゃっと笑っていた。


「……。」


やっぱり。

止めて正解だったな。


その程度にしか思っていなかった。




ーーバーを出る。


夜風が冷たい。



「さむーい!」

紅羽はヘラヘラ笑う。

そしていつも以上にハイテンション。


「紅羽、酔ってるだろ」

新が呆れる。

「酔ってなーい!」

「完全に酔ってる」



その後ろ。

莉桜は少し遅れて歩いていた。


「莉桜?」

「んー?」

返事はする。

でも足元がおぼつかない。

目も虚ろ。


「危なっ」

少しふらつく。

「大丈夫?歩ける?」

「うん、歩ける」

笑う。


一歩進む。

またすぐにふらつく。

歩けてない。


「…タクシー乗り場までおぶる」

「え…!?いいよ歩ける……」


そう言いながら。

またよろける。


「ほら。」

俺は莉桜の前にしゃがむ。

「乗れ。」

「……ありがと」


莉桜は少し迷って。

遠慮がちに背中へ乗ってきた。


「うわ、軽っ」

「…それ褒めてる?」

「褒めてる」

「……よかった」

少し笑う。


そのまま歩き出す。


莉桜の腕が自然と首へ回る。

体重を預ける。

酔ってるから力の抜けた体温が近い。


「……。」


なんだこれ。


近い。

近過ぎる。


「……琉生」

耳元で名前を呼ばれる。

「ん?」

「…いつもありがと」

「……え?」


「……琉生だから安心」

莉桜は小さく笑う。


「だから…眠くなってきた……」

そのまま。

少しだけ肩へ額を預ける。