君の隣で、私になれた



ーーその日の夜。


湊の部屋。


静かだった。

ソファに座って向かい合う。


湊が先に口を開く。

「今日は話あるんでしょ?」


私は頷く。

少しだけ深呼吸。

もう絶対に逃げない。

そう決めた。



「私。今まで。」

「ちゃんと話してこなかった」

「ごめん」


湊は黙って聞いている。

怒らない。

だから余計に緊張する。


「私ね、友達が好き」

「紅羽も…新も…琉生も。」

「4人でいる時間も。」

「全部が大切」


少し間。

「でも…」

「湊も大切」

「同じくらい失いたくない」

涙は出ない。

今日は泣かない。


ちゃんと伝える。


「だから…」

「どっちかを選べって言われても…」

「私は選べない」

「選びたくない」

湊の目を見てしっかりと伝える。


「……」

湊は何も言わない。

「お願い。私を信じて。」

「私、湊を裏切ることは絶対しない」


静寂。

長い沈黙。


湊が目を伏せる。

「……分かってる」

小さな声。

「分かってるんだ」

「分かってるのに…怖い」

私は顔を上げる。


「……怖い?」

「莉桜を失うのが怖い」

「だから離したくなかった」

「……」

「ごめん。」


その一言で。

私は初めて。

湊の”弱さ”を知った。


「私も…怖いよ…」

「でも、だからって、」

「友達を失うのも怖い」


「私、ずっと苦しかった。」

湊の目を真っ直ぐ見る。


「……」

「ちゃんと言えなくてごめん」


また沈黙。


湊がゆっくり笑う。

少しだけ寂しそうに。


「俺、頑張るよ」

その言葉に私は驚く。

「全部はすぐには変われない」

「でも…」

「お前がそんな顔するくらい」

「苦しかったなら頑張る」


「友達とも普通に会っていい」

「飲みに行ってもいい」

「迎えも毎回じゃなくていい。」

「位置情報ももう見ない」