「……私。」
声が少し震える。
「どうしたらいいのか…」
「分かんない」
その言葉が出た瞬間。
張りつめていた何かが。
少しだけほどけた。
琉生はすぐには答えなかった。
少しだけ考えて。
私の方を見た。
「だったら、ちゃんと話せ」
私は顔を上げる。
「逃げんな。」
「湊さんとも…」
少しだけ間が空く。
「俺とも」
「……え」
「避けられる方も結構しんどい」
琉生は少しだけ笑う。
その笑顔が胸に刺さった。
いつものふざけた表情じゃない。
少し寂しそうに笑う。
私は…
琉生まで傷付けていた。
「……ごめん」
また謝る私に。
琉生は少し困ったように笑う。
「だから。俺に謝らなくていい」
「でも、ちゃんと話せ。」
「逃げるな。」
その言葉は。
背中を押す言葉だった。
責める言葉じゃなかった。
私を。
前に進ませる言葉だった。
私は友達を失いたくない。
湊も失いたくない。
そして。
琉生も失いたくなかった。
恋じゃない。
でも。
この人は私にとって。
失いたくない大切な人だった。
「……逃げない。」
「ちゃんと話す!」
「湊とも。みんなとも。」
琉生は安心したように笑う。
「それでいい。」
その一言で。
私はやっと前を向けた。
ーー琉生side.
莉桜は笑っていた。
さっきまでより少しだけ。
ちゃんと笑えていた。
これでいい。
あとは逃げなければ大丈夫だ。
俺はそう思っていた。
この時は。
まだ知らなかった。
「逃げるな」
と背中を押したことが。
これから先。
俺たちの距離を。
少しずつ変えていくことになるなんて。
ーーー琉生side end.
